俗にいうオカルト系(;゜∀゜)

PFCcV81F

UFO,UMA,怪奇現象,心霊etc.
世間でいうオカルト…っつうかオカルトって言葉俺ぁ絶対認めないからね!!
…のスレ
  • [279] 小矢追淳二 2016/12/24 10:55

    みなさん「紫鏡」と言う言葉をご存じでしょうか。
    この言葉を知っている人は、二十歳の誕生日迄に忘れてしまわないと、
    鏡の世界に引き込まれ死んでしまうと言う話です。
    この話の発端となるのは私が小学3年生の時の担任の先生が住んでいた東京都八王子市にあると聞きました。
    昔、八王子にはライ病患者の隔離施設が存在し、ライ病患者達が不治の病と供に生活していました。
    ライ病とは皮膚病の一種で、肌がただれ、人によってはただれた肌が紫色に見えることから、
    「鏡に鏡に映った自分が紫色に見えた。」ら、ライ病が発生し死に至るという事でが紫鏡の発端だったと聞きます。
    先生が子供の頃もこの話しは有名で、
    「今A君が紫色に見えた。」
    「B君だって紫色の服着てるじゃん。」
    など、冗談混じりながらも怯えていたそうです。
    休み時間ともなれば、小学校で鏡の前に立ち、自分が紫色では無いことを確認するのを面白がってやっている時、
    ふとA君が
    「今、鏡の中の僕が笑ったよ。」
    と言いました。
    「A君はいっつも笑ってるじゃん。」
    丁度チャイムが鳴ったので、みんな笑いながら教室に向かいましたが、A君だけは青ざめた顔をしていました。
    先生は子供ながらに、何か嫌な予感がしたらしくA君に大丈夫だよと促しました。

    8: 本当にあった怖い名無し 投稿日:2014/11/17(月) 23:36:01.87
    翌日になると事態は一転しました。A君が学校に来ていません。
    「先生!A君はお休みですか?」
    クラスの誰かが聞きました。すると先生から、
    「悲しいお知らせですが、A君は昨夜心臓発作で亡くなりました。A君の為にもお通夜には参加しましょう。」
    クラス中が動揺する中、先生はピンと来ました。
    昼休みにいつものように友達と集まっている時に、言いました。
    「昨日、A君さぁ。鏡の自分が笑ったって言ってたよね。何か関係あるのかな?」
    周りのみんなは、そんなことある訳がないと怯えながらも強い言葉で否定しました。
    自分だって信じたくはありません。
    でも、もし…
    お通夜でA君の家に家族で行きました。
    みんな黒い服で、カラスの集団のようでした。
    花と線香をあげると、先生は
    「A君が見たい。おばちゃん、最後にお別れが言いたいからA君を見せてよ。」
    しかし、おばさんは幼い息子を失ったショックでか浮かない顔をしていました。
    先生も子供ながらも、それを察知して無理強いはしなかったそうです。
    お葬式も終わり、クラスの皆も落ち着きを取り戻した頃、先生はA君の家に線香をあげようと言いました。
    学校が終わり、友達とA君の家に行った時の事です。
    おばさんに、線香をあげに来たと言い上がらせてもらいました。

    9: 本当にあった怖い名無し 投稿日:2014/11/17(月) 23:36:44.24
    そして、皆が線香をあげて帰ろうとした時におばさんが
    「〇〇君、ちょっといい…?」
    先生は残り、他の友達は帰宅しました。A君と一番仲のよかった先生だけが残るように言われたからです。
    「実はAが死んだ朝、最初に見つけたのは私なのよ。」
    おばさんは続けて言いました、
    「時間になっても起きてこないから起こしに行ったの。最初に見た時、Aの体が黄色になっていることに気付いたわ。
    横向きになっていたんだけど、触れたら体が冷たいから急いで顔を見たら…
    言葉では言い現せない程、怯えた表情だったの…」
    先生は、最後まで聞きました。
    目は白目をむいていて、舌が飛び出し、腕が間接とは逆に曲がっていたそうです。
    お通夜で、見せられなかった理由もそれだったと、おばさんは伝えてくれました。
    先生も大学生になり、線香はあげていたもののA君の死因を忘れかけていました。
    当時所属していたサークルでも人気で一番可愛い女の子と付き合っていたそうです。
    先生の家族が旅行でいない時に彼女を家に呼びました。
    テレビを見たりしながらイチャイチャしていたそうです。
    先生がお風呂に入り、次に彼女が入りました。洗面所で髪を乾かしている彼女がこう言います。
    「ねぇ〇〇くん、今ね鏡の私が笑ってた。幸せだからかな?」
    その言葉を聞いた瞬間、背筋がゾッとし全てが走馬灯のように記憶として甦りました。
    今夜、何が起こるんだ?いや、たんなる病気だし何も起こらないかも知れない。
    でも、もし…
    記憶を押し殺すかのように、先生は何も知らないふりをして夜を迎えました。
    何かがあるなら見届けようと…

    11: 本当にあった怖い名無し 投稿日:2014/11/17(月) 23:38:15.46
    時間は午前2時半になろうかと言う時です、彼女は先に寝ていましたが先生はテレビを見ていました。
    するとベッドで寝ていた彼女が突然動き出したのです。
    先生は恐る恐る布団をはぎ取りました。
    すると、足元には見たこともない手鏡から笑顔の彼女が足引っ張っています。
    必死で引っ張りましたが、あまりに強い力にとうとう彼女は鏡の中に吸い込まれてしまったそうです。
    先生は怖くなり電気を付け、警察に連絡しましたが
    そんな冗談のような話を信じてくれるはずもなく、ただただ待ちました。
    すると、突然ずしりと肩に重さがかかりました。
    よく見ると黄色い人間の手です。
    振りほどいて見ると、見るも無残な姿の彼女がいたそうです。
    さすがに警察も乗り出し、死因を調べましたが心臓発作によるものと断定されました。
    先生はその影響によるショックで髪が白くなってしまい、しばらく入院しました。
    私が小学生の時、先生は27才でしたが真っ白い白髪でした。若爺さんとも呼ばれていました。
    先生はこの話をした後、言いました。
    「誰もが一生に一度は訪れる現象です。もし鏡の中の自分が笑ったら、決して誰にも言わないように。
    そして恐がらず、やさしくほほ笑み返して下さい。」
    と、涙ながらに喋る姿は小学生ながらも、クラス中が本気なんだと感じました。
    この話を知らない友達が、仲間内で
    「鏡の中の自分が笑った。」
    と言い、心臓発作で亡くなったことが、私の周りでも一度だけあります。
    笑いかける鏡の自分は、鏡ではなく水面やガラス、会話している人の目に写ることもあるそうです。
    ひょっとすると、自分の知らない間に笑いかけているかも知れません。
    迂闊に鏡の中の自分を、他人に語らないようにした方が賢明だと思います…。
    イイネ! 返信
  • [278] 小矢追淳二 2016/12/23 11:10

    東京駅と高尾駅の間を往復する中央線は、利用者が多くとても混雑する路線であり、しょっちゅう
    いわゆる「人身事故」で止まります。私はその運転をこの半年しているものですが、同僚の間で
    様々に噂をされている幽霊を見たことは、1ヶ月前まではありませんでした。

    しかし1ヶ月ほど前から、立川まであと少しのとある駅の下りホーム手前に、毎晩いるんです。
    赤黒い色のワンピースを着ていて、眺めの髪に少しウェーブがかかったような感じの若い女性で、
    最初はいつも線路脇からうつむいて線路を眺めていました。
    最初に見たときは急ブレーキをかけましたが、すぐにすっと消えてしまいました。ものすごく驚いて
    なぜかしびれた指先を眺めながら、しばらく呆然としていましたが、すぐに我に返り、遅延に対する
    いくつかの処置をしながら駅へ電車を入れました。その後も、夜間にその駅に侵入するときには必ずその人がおり、電車が近づくと消えてしまうと
    いうのを繰り返していました。ただ、一昨日の夜は、近づいても消えず、彼女は線路に向かって歩いてきたのです。どうすることも
    できず、私はそのままその幽霊を轢きました。
    そして、昨晩彼女は、線路上から初めて、こちらを見上げました。電車の下に消えていきながら
    かすかに笑ったように見えたその顔は、目のあたりがぼうっと暗くなっていて、そこには何も
    見えませんでした。
    今日の休みが終われば、明日はまた勤務します。私は明後日の朝を迎えることができるのか、
    よく分かりません。乗客の皆さんを巻き込むような事故だけは起こさないようにと思っています。
    イイネ! 返信
  • [277] 小矢追淳二 2016/12/22 00:40

    死の瞬間
    キューブラー・ロスという有名な死の研究者は知ってますか?
    「死の瞬間」などの執筆で知られる彼女は、死後の生や輪廻転生に肯定的でした。
    彼女の著書や講演に勇気付けられ、自らの死を克服した人は数多くいます。
    しかし、今や亡き者となってしまった彼女が、
    死の数ヶ月前に辿りついた結論は、世に余り知られていません。
    それが余りに恐ろしいものであったため、親族が口を噤んでしまったからです。
    彼女が辿りついた結論とは、「死後の生はなく、死後の無もない」というものでした。
    つまり、人間は「死ぬ瞬間の光景、感情、痛みを感じながら、そこで時間が停止する」
    状態になるのだそうです。
    時間が停止するので、意識を失うことはありません。無にはなれません。
    大抵の人が死の瞬間は苦しみます。
    死ぬ瞬間のその苦しみを永久に感じ続けるのです。
    生前自分の死を受け入れていた彼女も、
    この結論に辿りついて以来、気が狂ったように叫び、
    その瞬間が来るのを恐れ続けたといいます。
    イイネ! 返信
  • [276] 小矢追淳二 2016/12/21 00:03

    続き

    夜中、二時位だと思うが本堂の戸が突如ドンドンと叩かれる。
    仏像が揺れる程尋常じゃない叩き方で外から赤ん坊の泣き声まで聞こえる。
    恐くてガタガタ震え布団をかぶって去るのを待った。
    4時頃までそれは続き、5時に坊さんが来てくれた。
    俺は夜中の事を尋ねたが、真剣な顔で何か考え込み何も教えてくれなかった。
    6時頃、夏休みだからか近所の子がラジオ体操に来て坊さんと参加する。
    ありえないくらい日常の空気で少しほっとした・・・。
    午前中境内の掃除を手伝い、本堂を水拭きする。
    午後から読経を受け、また夜が来た。
    坊さんに何があっても戸を開けてはならない。例え泣き縋られても決して開けるなと言われる。
    眠りについたと同時に昨晩と同じようにドンドンと音がはじまった。
    暫らくするとドサっと何か崩れるような音がして聞き覚えのある声が聞こえた。

    『なんで弘ちゃん開けてくれないの?』

    加奈だ・・・・。確かに加奈の声がする。
    膝がガクガク震え心臓がバクバクいってるのがわかる。
    『あけてよ・・さむいよ・・』
    耳を塞ぐが聞こえる声。気がどうにかなりそうだった。
    朝が近づくにつれ、声は聞こえなくなった。
    昨日と同じく5時頃に坊さんが来てくれた。
    緊張から解放されたが恐怖のあまり恥ずかしながら小便もらしてた・・・。

    62: 本当にあった怖い名無し 2007/07/13(金) 03:03:24 ID:03rSqLFyO
    で、一週間お寺で世話になり最後の夜はもう加奈らしきモノは来なくなった。
    もう命までは取られまいと判断したのか、坊さんの許しが出て帰ることに。

    坊さんの話
    弘君にわかりやすく言うととても強力な怨霊に取りつかれていた。あのまま放置していたら確実に数か月で連れて行かれた。
    今後は影響は少なくなるだろうけど、成仏までは行かなかった。
    お守りを肌身離さず持っている事、家と部屋の四隅に粗塩を盛り入って来れないようにする事、何かあったらすぐに来る事。
    こうしてその後、約8年はほとんど霊障はあらわれなかった。
    で、冒頭にあった中学の同窓会に続く。

    加奈の通夜以来だった同級生と合い酒を酌み交わしたのだけど、自然と加奈の話になった。
    この話、レイプの件を含め地元ではタブーとなっていたのだけど加奈の両親は離婚、名家だった家も売りに出され今では違う人が住んでいるとの事。
    お姉さん夫妻は仕事の関係で子供を連れ東京に出てきているとの事。
    凄く嫌な予感がしたんだけど、皆には俺にあった事は言わないでおいたのでへぇー、と話を合わせるくらいにしてた。
    この最中、居酒屋の照明が不意に落ちた。
    霊だとかの話はしていないので停電した位にしか皆は思わなかっただろうが、俺には誰の仕業かすぐにわかった。

    65: 本当にあった怖い名無し 2007/07/13(金) 03:28:35 ID:03rSqLFyO
    その晩はホテルに泊り、翌朝親戚の家に挨拶に行き午後には東京へ戻ってきた。
    今は家を出て一人暮らしなんだけど、駅を降りて家路に向かう途中、強烈な違和感というか立ちくらみがしてガードレールに掴まり座り込んだ・・・。
    理由はすぐにわかった。
    道路の反対側に親子連れが歩いているんだ。
    加奈の姉さんと旦那。その間に遠目でもダウン症とわかる子供。その子が俺を指指してるんだ・・・・。
    幸い、座り込んだおかげで姉さん夫妻には俺は見えていないと思う。
    行き過ぎるのを確認すると家に向かい歩く。かなりフラフラする。家に着くなり嘔吐。耳鳴りがする。
    あー、俺もおかしくなったかな・・・。と、本気で思った。
    この大都会でなんちゅう偶然なんだと。考えただけで頭が痛くなってきた。
    俺何か悪い事したかな?何か恨まれる事したのかな?
    それから毎日そんな事考えています。
    霊障はあまり?ないけどあの子が指を俺に向かって指していたのは絶対偶然じゃない気がする。
    目も確かに合ったし、ダウン症からかも知れないが笑っていた。
    この連鎖を打ち切る為にも明日にでもお世話になった寺に行くつもりです。

    長々すみませんでした。
    質問なんですが、小さい頃から霊については信じているほうなので、加奈の事はあり得なくない話なのですが、血も繋がってない、会った事もない子が俺を認識するような・・・こんな事ってあり得ますかね・・・・・。
    イイネ! 返信
  • [275] 小矢追淳二 2016/12/20 01:43

    先日中学校の同窓会があり、当時の俺のクラスではタブー化された話が話題になりました。
    中学校で同じクラスだった加奈(仮)と言う子が居た。
    活発で勉強も良く出来る可愛い系の子だった。まあ俺の初恋の人だった。

    三年の夏休みに学校の図書室に行った時、偶然にも調べ物をしていた加奈が居た。
    図書室には俺と加奈しか居なかった為、進路について話したり雑談したりしながらお互い自分の作業をした。
    俺はクラスの友達には言ってなかったが親の仕事の関係で東京の高校に行く事になっていたので加奈にそう打ち明けた。
    「そうなんだ、寂しくなるね」加奈は少し悲しそうな顔をして俺を見た。
    好きな子にそんな顔されて多分舞い上がると言うか逆上せてしまったんだと思う。
    その場で告白してしまった・・・。
    結果ははぐらかされてしまったが、東京に行っても手紙しようね的な仲までは進展した。

    夕方になり、途中まで一緒に帰宅。とその帰り道、加奈が忘れ物をしてしまったと言い一人で学校へ戻る事に。
    別れ際、加奈が言う。
    「弘ちゃん(俺・仮)の事、私も好きだよ」
    本当に嬉しかった。今にも踊りだしそうなくらい浮かれて俺は帰宅した。

    これが加奈と交わした最後の言葉になるとは思いもしなかった。

    48: 本当にあった怖い名無し 2007/07/13(金) 00:44:16 ID:03rSqLFyO
    昨日の話からして今日も図書室に行けば会えそうだったので朝から学校へ向かう。
    途中で駐在と県警のパトカーが停まっていたが特に気にもとめず学校に向かう。
    図書室に加奈の姿は無く、俺は一日図書室で加奈を待っていたがやはり来なかった。
    それからほぼ毎日学校へ行くも加奈には会えなかった。

    夏休みが終わり、新学期が始まったが加奈は居ない。
    担任が帰りにクラスの皆に話があると全員残された。
    話の内容は要約するとこんな感じ。

    加奈は病気になり、県外の病院に入院した。
    ご両親はクラスの皆には見舞いに来て欲しくないので病院名とかは言わないで欲しい、との事らしい。
    クラス全員が動揺し担任に見舞いに行かせて欲しいと言ったが担任はダメと一点張り。
    そんなこんなで数日たった日の放課後、こんな噂が出た。
    加奈は夏休み、不良数人に拉致されレイプされたという噂。
    精神的に非常にヤバく学校に来られないらしい。
    そんな話、信じられなかった。目の前が真っ暗になった。
    しかし噂の立った元が別のクラスの女子、駐在の娘である事がわかり話は真実味が増す。
    俺は何度も加奈の自宅に行き、話を聞かせて欲しいと懇願するも父親に門前で追い返された。
    そして加奈は学校に来ないまま卒業式を迎え、俺は東京の高校に通う事になった。

    49: 本当にあった怖い名無し 2007/07/13(金) 01:14:29 ID:03rSqLFyO
    高校に通い新しい生活がはじまると加奈の事は次第に薄らいで行った。
    それでも加奈と最後に話した内容は時々夢に出た。
    高校三年の時に中学時代の友人から加奈の訃報を聞いた。
    自殺だったそうだ。自宅で首を吊ったらしい。

    俺はその日の内に飛行機に乗り加奈の通夜に出た。
    地元でも名家だった加奈の家だが、参列者は少なかった。
    受け付けで名簿に名前を書くと係の人に焼香が終わったら親族の部屋に行くように言われた。
    涙が溢れたが、なんとか焼香を終え、親族の部屋へ。
    部屋には加奈の親父さんと年の離れた姉さんが居た。
    そこで俺に語られた事は耳を疑うような悲しく恐ろしい話だった。
    憔悴した親父さんの話。
    加奈は俺と図書室で会った日の帰りに偶然車で来ていた不良四人に絡まれ車に乗せられ朝方までレイプされたらしい。
    家に戻ってきた時は全裸で身も心もボロボロの状態だった。言動もおかしくケタケタと笑っていた。
    噂が立つといけないので県外の病院にて治療を受けた。精神的なストレスにより痴呆のようになってしまい、さらに検査の結果妊娠も判明。
    堕ろそうとしても「これは弘ちゃんの子!」と泣き叫び手に負えず結局堕胎出来ない時期まで来てしまった。

    50: 本当にあった怖い名無し 2007/07/13(金) 01:30:20 ID:03rSqLFyO
    結局男の子を出産し、名前は「弘」になった。加奈がそう呼び続けていたので・・・。
    加奈は出産後、自宅に戻し奥座敷で療養していた。
    この頃はすでに母親も気がふれてしまい入院してしまった。
    加奈の面倒は親父さんが見ていたが加奈は子供返りしており、まともな会話は出来なかった。
    時々、我に帰ったような素振りを見せたがその都度自殺未遂を繰り返し、施設に入院させようとした矢先、とうとう首を吊ってしまった。
    赤ちゃんはお姉さん夫妻が引き取ったがダウン症らしい・・・

    親父さんも話が終わると泣き崩れてしまい、お姉さんは俺にこんな話をしてしまい申し訳無かったと言い俺を返した。

    俺はあの日一緒に学校まで引き返さなかった自分を呪う気持ちと涙しか出なかった。

    だが、話はこれで終わらない。
    これより数年に渡り俺の身の周りに不可思議な事が起こるようになったんだ。

    53: 本当にあった怖い名無し 2007/07/13(金) 02:04:39 ID:03rSqLFyO
    その後、大学へ進む為に勉強に励む俺。
    深夜ラジオをつけると不意に聞こえてくる女の声。
    ラジオのDJの声に混じり「弘ちゃん、苦しいよ」と声が聞こえる。
    ベッドで寝てると金縛りとともに聞こえる赤ちゃんの泣き声。
    ふと二階自室の窓を見ると女の姿があったり、携帯アラームが誤作動したり。
    こんな事が数か月続き、俺もダウン。
    寺に行き坊さんに祓って貰うが、気休めにしかならないと言われる。
    大学は失敗、予備校に通いはじめそこで知り合った女の子を好きになり付き合う。が、彼女にも影響が出た。寝てると女の泣き声が毎晩のように聞こえ、付き合うどころでは無くなってしまい別れる。
    家は不審火が二回、霊障らしき音なんかは四六時中。
    さすがに参ってしまい一度加奈の墓参りに行くことにした。
    線香を供え、手を併せ加奈の冥福を祈る。
    その時、住職がやって来て俺にこう言った。
    君はこのままでは連れて行かれるかも知れない。東京の○川市にある○○寺の○○さんを尋ねなさい。きっと力になってくれるから。
    と言ってくれた。

    翌日東京に戻り紹介された寺を尋ねる。
    初老の坊さんが俺を見るやいなやかなり強引に手を引いて本堂へ連れていかれた。
    そこで作務衣みたいなのに着替えさせられ頭を剃られ、経を読み上げる。
    いきなりの展開にビビりながらも坊さんが真剣なのでそれほど事態は深刻なのだと悟り言われるままにする。
    一日目は昼から夜の9時位までずっとそこでお経をあげてもらう。
    夜は簡素な食事を頂き、今夜は本堂より一歩も出るなと言われた。

    続く
    イイネ! 返信
  • [274] 小矢追淳二 2016/12/19 00:04

    うちの町内にある神社には、”日本名水百選”に選ばれた程の清水が
    湧き出る小さな泉がある。
    週末ともなると、近隣だけではなく遠方からも評判を聞きつけて多くの人々が
    その清水を汲みにやって来る。
    また、その水は飲んだり、患部にかけたりすることで病気やできもの、
    腫れものなどが直るとされる霊験あらたかな聖水としても知られており、
    そんなご利益を求めてやってくる人も少なくない。
    だが、あまり知られていないが、その泉にはこんな逸話が残っている。
    百年ほど前、泉の近くにある母娘が住んでいた。
    気の毒なことに、娘には生まれたときから顔に醜い痣があった。
    母親はそれをたいそう気に病んで、毎日のように昼となく夜となく娘を泉に
    連れて行き、その痣に泉の水をかけてやっていたのだが、
    いっこうに痣は消えなかった。
    ある日、いつものように娘を泉に連れて行った母親は、突如何を思ったのか
    娘の顔を泉の中に沈めようとした。
    激しく抵抗する娘の様子にも躊躇することなく、驚異的な力で母親は娘の頭を
    持って泉に沈め続けた。
    騒ぎを聞きつけた近所の人が、急いで母親と娘を引き離そうとするが、
    それでも容易に離すことが出来ない。
    自分だけでは埒が明かず、助けを呼びにその場を離れ、何人かを連れて
    急いで戻ってきた。すると・・・
    ふらふらとこちらに向かって歩いている母親の姿が目に入った。
    母親は「直った直った」と叫びながら、泣き、笑い、そしてあとはなにやら
    ブツブツとつぶやきながら歩いていた。
    母親を捕まえて、人々が泉のそばに駆けつけてみると、娘は凄まじい形相で
    息絶えたあとだった。
    だが不思議なことに、その顔からはきれいに痣が消えていたのだという・・・
    この話は神社のほんの近辺ににしか知られていない話である。
    今でも、その泉には水を求めて多くの人々がやって来ている。
    イイネ! 返信
  • [273] 小矢追淳二 2016/12/17 13:21

    アンティーク好きな彼女とリサイクルショップやアンティークショップ等をドライブがてら巡る事になった。
    俺もレゲーとか古着など好きで、掘り出し物のファミコンソフトや古着などを集めていた。買うものは違えども、そのような物が売ってる店は同じなので、楽しく店を巡っていた。お互い掘り出し物も数点買う事ができ、テンション上がったまま車を走らせていると、一軒のボロッちい店が目に付いた。
    「うほっ!意外とこんな寂れた店に、オバケのQ太郎ゴールドバージョンが眠ってたりすんだよな」
    浮かれる俺を冷めた目で見る彼女と共に、俺は店に入った。
    コンビニ程度の広さの、チンケな店だった。主に古本が多く、家具や古着の類はあまり置いていない様だった。ファミコンソフトなど、「究極ハリキリスタジアム」が嫌がらせのように1本だけ埃を被って棚に置いてあるだけだった。もう出ようか、と言いかけた時、
    「あっ」
    と彼女が驚嘆の声を上げた。俺が駆け寄ると、ぬいぐるみや置物などが詰め込まれた、バスケットケースの前で彼女が立っていた。
    「何か掘り出し物あった?」
    「これ、凄い」
    そう言うと彼女は、バスケットケースの1番底に押し込まれる様にあった、正20面体の置物を、ぬいぐるみや他の置物を掻き分けて手に取った。
    今思えば、なぜバスケットケースの1番底にあって外からは見えないはずの物が
    彼女に見えたのか、不思議な出来事はここから既に始まっていたのかもしれない。
    「何これ?プレミアもん?」
    「いや、見たことないけど…この置物買おうかな」
    まぁ、確かに何とも言えない落ち着いた色合いのこの置物、オブジェクトとしては悪くないかもしれない。俺は、安かったら買っちゃえば、と言った。
    レジにその正20面体を持って行く。しょぼくれたジイさんが古本を読みながら座っていた。
    「すいません、これいくらですか?」
    その時、俺は見逃さなかった。ジイさんが古本から目線を上げ、正20面体を見た時の表情を。
    驚愕、としか表現出来ないような表情を一瞬顔に浮かべ、すぐさま普通のジイさんの表情になった。
    「あっ、あぁ…これね…えーっと、いくらだったかな。ちょ、ちょっと待っててくれる?」
    そう言うとジイさんは、奥の部屋(おそらく自宅兼)に入っていった。奥さんらしき老女と何か言い争っているのが断片的に聞こえた。やがて、ジイさんが1枚の黄ばんだ紙切れを持ってきた。
    「それはね、いわゆる玩具の1つでね、リンフォンって名前で。この説明書に詳しい事が書いてあるんだけど」
    ジイさんがそう言って、黄ばんだ汚らしい紙を広げた。随分と古いものらしい。
    紙には例の正20面体の絵に「RINFONE(リンフォン)」と書かれており、それが「熊」→「鷹」→「魚」に変形する経緯が絵で描かれていた。
    わけの分からない言語も添えてあった。ジイさんが言うにはラテン語と英語で書かれているらしい。
    「この様に、この置物が色んな動物に変形出来るんだよ。まず、リンフォンを両手で
     包み込み、おにぎりを握るように撫で回してごらん」
    彼女は言われるがままに、リンフォンを両手で包み、握る様に撫で回した。
    すると、「カチッ」と言う音がして、正20面体の面の1部が隆起したのだ。
    「わっ、すご〜い」
    「その出っ張った物を回して見たり、もっと上に引き上げたりしてごらん」
    ジイさんに言われるとおりに彼女がすると、今度は別の1面が陥没した。
    「すご〜い!パズルみたいなもんですね!ユウもやってみたら」
    この仕組みを言葉で説明するのは凄く難しいのだが、「トランスフォーマー」と言う
    玩具をご存知だろうか?カセットテープがロボットに変形したり、拳銃やトラックが
    ロボットに…と言う昔流行った玩具だ。
    このリンフォンも、正20面体のどこかを押したり回したりすると、熊や鷹、魚などの色々な動物に変形する、と想像してもらいたい。
    もはや、彼女はリンフォンに興味深々だった。俺でさえ凄い玩具だと思った。
    「あの…それでおいくらなんでしょうか?」彼女がおそるおそる聞くと、
    「それねぇ、結構古いものなんだよね…でも、私らも置いてある事すら忘れてた物だし…よし、特別に1万でどうだろう?ネットなんかに出したら好きな人は数十万でも買うと思うんだけど」
    そこは値切り上手の彼女の事だ。結局は6500円にまでまけてもらい、ホクホク顔で店を出た。
    次の日は月曜日だったので、一緒にレストランで晩飯を食べ終わったら、お互いすぐ帰宅した。
    月曜日。仕事が終わって家に帰り着いたら、彼女から電話があった。
    「ユウくん、あれ凄いよ、リンフォン。ほんとパズルって感じで、動物の形になってくの。仕事中もそればっかり頭にあって、手につかない感じで。マジで下手なTVゲームより面白い」
    と一方的に興奮しながら彼女は喋っていた。電話を切った後、写メールが来た。
    リンフォンを握っている彼女の両手が移り、リンフォンから突き出ている、熊の頭部のような物と足が2本見えた。俺は、良く出来てるなぁと感心し、その様な感想をメールで送り、やがてその日は寝た。
    次の日、仕事の帰り道を車で移動していると、彼女からメールが。
    「マジで面白い。昨日徹夜でリンフォンいじってたら、とうとう熊が出来た。見にきてよ」
    と言う風な内容だった。俺は苦笑しながらも、車の進路を彼女の家へと向けた。
    「なぁ、徹夜したって言ってたけど、仕事には行ったの?」
    着くなり俺がそう聞くと、
    「行った行った。でも、おかげでコーヒー飲み過ぎて気持ち悪くなったけど」
    と彼女が答えた。テーブルの上には、4つ足で少し首を上げた、熊の形になったリンフォンがあった。
    「おぉっ、マジ凄くないこれ?仕組みはどうやって出来てんだろ」
    「凄いでしょう?ほんとハマるこれ。次はこの熊から鷹になるはずなんだよね。早速やろうかなと思って」
    「おいおい、流石に今日は徹夜とかするなよ。明日でいいじゃん」
    「それもそうだね」
    と彼女は良い、簡単な手料理を2人で食べて、1回SEXしてその日は帰った。ちなみに、言い忘れたが、リンフォンは大体ソフトボールくらいの大きさだ。
    水曜日。通勤帰りに、今度は俺からメールした。
    「ちゃんと寝たか?その他もろもろ、あ〜だこ〜だ…」すると
    「昨日はちゃんと寝たよ!今から帰って続きが楽しみ」と返事が返ってきた。
    そして夜の11時くらいだったか。俺がPS2に夢中になっていると、写メールが来た。
    「鷹が出来たよ〜!ほんとリアル。これ造った人マジ天才じゃない?」
    写メールを開くと、翼を広げた鷹の形をしたリンフォンが移してあった。
    素人の俺から見ても精巧な造りだ。今にも羽ばたきそうな鷹がそこにいた。
    もちろん、玩具だしある程度は凸凹しているのだが。それでも良く出来ていた。
    「スゲー、後は魚のみじゃん。でも夢中になりすぎずにゆっくり造れよな〜」と返信し、やがて眠った。
    木曜の夜。俺が風呂を上がると、携帯が鳴った。彼女だ。
    「ユウくん、さっき電話した?」
    「いいや。どうした?」
    「5分ほど前から、30秒感覚くらいで着信くるの。通話押しても、何か街の雑踏のザワザワみたいな、大勢の話し声みたいなのが聞こえて、すぐ切れるの。着信見たら、普通(番号表示される)か(非通知)か(公衆)とか出るよね?でもその着信見たら(彼方(かなた))って出るの。こんなの登録もしてないのに。気持ち悪くて」
    「そうか…そっち行ったほうがいいか?」
    「いや、今日は電源切って寝る」
    「そっか、ま、何かの混線じゃない?あぁ、所でリンフォンどうなった?魚は」
    「あぁ、あれもうすぐ出来るよ、終わったらユウくんにも貸してあげようか」
    「うん、楽しみにしてるよ」
    金曜日。奇妙な電話の事も気になった俺は、彼女に電話して、家に行く事になった。
    リンフォンはほぼ魚の形をしており、あとは背びれや尾びれを付け足すと、完成という風に見えた。
    「昼にまた変な電話があったって?」
    「うん。昼休みにパン食べてたら携帯がなって、今度は普通に(非通知)だったんで出たの。それで通話押してみると、(出して)って大勢の男女の声が聞こえて、それで切れた」
    「やっぱ混線かイタズラかなぁ?明日ド0モ一緒に行ってみる??」
    「そうだね、そうしようか」
    その後、リンフォンってほんと凄い玩具だよな、って話をしながら魚を
    完成させるために色々いじくってたが、なかなか尾びれと背びれの出し方が分からない。やっぱり最後の最後だから難しくしてんのかなぁ、とか言い合いながら、四苦八苦していた。
    やがて眠くなってきたので、次の日が土曜だし、着替えも持ってきた俺は彼女の家に泊まる事にした。
    嫌な夢を見た。暗い谷底から、大勢の裸の男女が這い登ってくる。
    俺は必死に崖を登って逃げる。後少し、後少しで頂上だ。助かる。
    頂上に手をかけたその時、女に足を捕まれた。
    「連  れ  て  っ  て  よ  ぉ  !  !  」
    汗だくで目覚めた。まだ午前5時過ぎだった。再び眠れそうになかった俺は、
    ボーっとしながら、彼女が置きだすまで布団に寝転がっていた。
    土曜日。携帯ショップに行ったが大した原因は分からずじまいだった。
    そして、話の流れで気分転換に「占いでもしてもらおうか」って事になった。
    市内でも「当たる」と有名な「猫おばさん」と呼ばれる占いのおばさんがいる。
    自宅に何匹も猫を飼っており、占いも自宅でするのだ。所が予約がいるらしく、
    電話すると、運よく翌日の日曜にアポが取れた。その日は適当に買い物などして、外泊した。
    日曜日。昼過ぎに猫おばさんの家についた。チャイムを押す。
    「はい」
    「予約したた00ですが」
    「開いてます、どうぞ」
    玄関を開けると、廊下に猫がいた。俺たちを見ると、ギャッと威嚇をし、奥へ逃げていった。廊下を進むと、洋間に猫おばさんがいた。文字通り猫に囲まれている。
    俺たちが入った瞬間、一斉に「ギャーォ!」と親の敵でも見たような声で威嚇し、散り散りに逃げていった。流石に感じが悪い。彼女と困ったように顔を見合わせていると、
    「すみませんが、帰って下さい」
    と猫おばさんがいった。ちょっとムッとした俺は、どういう事か聞くと、
    「私が猫をたくさん飼ってるのはね、そういうモノに敏感に反応してるからです。猫たちがね、占って良い人と悪い人を選り分けてくれてるんですよ。こんな反応をしたのは始めてです」
    俺は何故か閃くものがあって、彼女への妙な電話、俺の見た悪夢をおばさんに話した。すると、
    「彼女さんの後ろに、、動物のオブジェの様な物が見えます。今すぐ捨てなさい」
    と渋々おばさんは答えた。
    それがどうかしたのか、と聞くと
    「お願いですから帰って下さい、それ以上は言いたくもないし見たくもありません」
    とそっぽを向いた。
    彼女も顔が蒼白になってきている。俺が執拗に食い下がり、
    「あれは何なんですか?呪われてるとか、良くアンティークにありがちなヤツですか?」
    おばさんが答えるまで、何度も何度も聞き続けた。するとおばさんは立ち上がり、
    「あれは凝縮された極小サイズの地獄です!!地獄の門です、捨てなさい!!帰りなさい!!」
    「あのお金は…」
    「入   り   ま   せ   ん   !   !」
    この時の絶叫したおばさんの顔が、何より怖かった。
    その日彼女の家に帰った俺たちは、すぐさまリンフォンと黄ばんだ説明書を新聞紙に包み、ガムテープでぐるぐる巻きにして、ゴミ置き場に投げ捨てた。やがてゴミは回収され、それ以来これといった怪異は起きていない。
    数週間後、彼女の家に行った時、アナグラム好きでもある彼女が、紙とペンを持ち、こういい始めた。
    「あの、リンフォンってRINFONEの綴りだよね。偶然と言うか、こじ付けかもしれないけど、これを並べ替えるとINFERNO(地獄)とも読めるんだけど…」
    「…ハハハ、まさか偶然偶然」
    「魚、完成してたら一体どうなってたんだろうね」
    「ハハハ…」
    俺は乾いた笑いしか出来なかった。あれがゴミ処理場で処分されていること、
    そして2つ目がないことを、俺は無意識に祈っていた。
    イイネ! 返信
  • [272] 小矢追淳二 2016/12/16 00:29

    暑い日が続いてて汗をかきながら求人をめくっては電話してました。
    ところが、何故かどこもかしこも駄目,駄目駄目。
    擦り切れた畳の上に大の字に寝転がり、適当に集めた求人雑誌をペラペラと悪態をつきながらめくってたんです。
    不景気だな、、、節電の為、夜まで電気は落としています。
    暗い部屋に落ちそうでおちない夕日がさしこんでいます。
    窓枠に遮られた部分だけがまるで暗い十字架のような影を畳に落としていました。
    、、遠くで電車の音が響きます。
    目をつむると違う部屋から夕餉の香りがしてきます。
    「カップラーメンあったな、、」私は体をだるそうに起こし散らかった求人雑誌をかたずけました。
    ふと、、偶然開いたのでしょうかページがめくれていました。
    そこには某県(ふせておきます)の旅館がバイトを募集しているものでした。
    その場所はまさに私が旅行に行ってみたいと思ってた所でした。
    条件は夏の期間だけのもので時給はあまり、、というか全然高くありません
    でしたが、住みこみで食事つき、というところに強く惹かれました。
    ずっとカップメンしか食べてません。まかない料理でも手作りのものが食べれて、しかも行きたかった場所。
    私はすぐに電話しました。
    「、、はい。ありがとうございます!○○旅館です。」
    「あ、すみません。求人広告を見た者ですが、まだ募集してますでしょうか?」
    「え、少々お待ち下さい。・・・・・・・・・・・・・・・・・・ザ、、、ザ、、ザザ、、、
    ・・い、・・・そう・・・・だ・・・・・・・・」
    受けつけは若そうな女性でした。
    電話の向こう側で低い声の男と(おそらくは 宿の主人?)小声で会話をしていました。
    私はドキドキしながらなぜか正座なんかしちゃったりして、、待ってました。やがて受話器をにぎる気配がしました。
    「はい。お電話変わりました。えと、、、バイトですか?」
    「はい。××求人でここのことをしりまして、是非お願いしたいのですが」
    「あー、、ありがとうございます。こちらこそお願いしたいです。いつからこれますか?」
    「いつでも私は構いません」「じゃ、明日からでもお願いします。すみません
    お名前は?」「神尾(仮名)です」「神尾君ね。はやくいらっしゃい、、、」
    とんとん拍子だった。運が良かった。。私は電話の用件などを忘れないように録音するようにしている。
    再度電話を再生しながら必要事項をメモっていく。
    住みこみなので持っていくもののなかに 保険証なども必要とのことだったのでそれもメモする。
    その宿の求人のページを見ると白黒で宿の写真が写っていた。
    こじんまりとしているが自然にかこまれた良さそうな場所だ。
    私は急にバイトが決まり、しかも行きたかった場所だということもあってホっとした。
    しかし何かおかしい。私は鼻歌を歌いながらカップメンを作った。何か鼻歌もおかしく感じる。
    日はいつのまにかとっぷりと暮れ、あけっぱなしの窓から湿気の多い生温かい風が入ってくる。
    私はカップメンをすすりながら、なにがおかしいのか気付いた。
     条件は良く、お金を稼ぎながら旅行も味わえる。女の子もいるようだ。
    旅館なら出会いもあるかもしれない。だが、何かおかしい。
    暗闇に窓のガラスが鏡になっている。その暗い窓に私の顔がうつっていた。
    なぜか、まったく嬉しくなかった。。理由はわからないが私は激しく落ちこんでいた。
    窓にうつった年をとったかのような生気のない自分の顔を見つめつづけた。
    次の日、私は酷い頭痛に目覚めた。激しく嗚咽する。風邪、、か?
    私はふらふらしながら歯を磨いた。歯茎から血が滴った。
    鏡で顔を見る。ギョッとした。目のしたにはくっきりと墨で書いたようなクマが出来ており、顔色は真っ白。、、、まるで、、、。
    バイトやめようか、、とも思ったが、すでに準備は夜のうちに整えている。
    しかし、、気がのらない。そのとき電話がなった。
    「おはようございます。○○旅館のものですが、神尾さんでしょうか?」
    「はい。今準備して出るところです。」
    「わかりましたー。体調が悪いのですか?失礼ですが声が、、」
    「あ、すみません、寝起きなので」
    「無理なさらずに。こちらについたらまずは温泉などつかって頂いて構いませんよ。
    初日はゆっくりとしててください。そこまで忙しくはありませんので。」
    「あ、、だいじょうぶです。でも、、ありがとうございます。」
    電話をきって家を出る。あんなに親切で優しい電話。ありがたかった。
    しかし、電話をきってから今度は寒気がしてきた。ドアをあけると眩暈がした。
    「と、、とりあえず、旅館までつけば、、、」
    私はとおる人が振りかえるほどフラフラと駅へ向かった。
    やがて雨が降り出した。
    傘をもってきてない私は駅まで傘なしで濡れながらいくことになった。
    激しい咳が出る。「、、旅館で休みたい、、、、」
    私はびしょぬれで駅に辿りつき、切符を買った。そのとき自分の手を見て驚いた。。
    カサカサになっている。濡れているが肌がひび割れている。まるで老人のように。
    「やばい病気か、、?旅館まで無事つければいいけど、、」
    私は手すりにすがるようにして足を支えて階段を上った。何度も休みながら。
    電車が来るまで時間があった。私はベンチに倒れるように座りこみ苦しい息をした。。ぜー、、、ぜー、、、声が枯れている。
    手足が痺れている。波のように頭痛が押し寄せる。ごほごほ!咳をすると足元に血が散らばった。私はハンカチで口を拭った。
    血がベットリ。。
    私は霞む目でホームを見ていた。
    「はやく、、旅館へ、、、」
    やがて電車が轟音をたててホームにすべりこんでき、ドアが開いた。
    乗り降りする人々を見ながら、私はようやく腰を上げた。腰痛がすごい。
    フラフラと乗降口に向かう。体中が痛む。あの電車にのれば、、、、
    そして乗降口に手をかけたとき、車中から鬼のような顔をした老婆が突進してきた。
    どしん!私はふっとばされホームに転がった。
    老婆もよろけたが再度襲ってきた。私は老婆と取っ組み合いの喧嘩を始めた。
    悲しいかな、相手は老婆なのに私の手には力がなかった。
    「やめろ!やめてくれ!俺はあの電車にのらないといけないんだ!」
    「なぜじゃ!?なぜじゃ!?」
    老婆は私にまたがり顔をわしづかみにして地面に抑えつけながら聞いた。
    「りょ、、旅館にいけなくなってしまう!」
    やがて駅員たちがかけつけ私たちは引き離された。
    電車は行ってしまっていた。私は立ち上がることも出来ず、人だかりの中心で座りこんでいた。
    やがて引き離された老婆が息をととのえながら言った。
    「おぬしは引かれておる。危なかった。」そして老婆は去っていった。
    私は駅員と2〜3応答をしたがすぐに帰された。
    駅を出て仕方なく家に戻る。
    すると体の調子が良くなってきた。声も戻ってきた。
    鏡を見ると血色がいい。
    私は不思議に思いながらも家に帰った。
    荷物を下ろし、タバコを吸う。
    落ちついてからやはり断わろうと旅館の電話番号をおした。すると無感情な軽い声が帰ってきた。
    「この電話番号は現在使われておりません、、」
    押しなおす
    「この電話番号は現在使われておりません、、」
    私は混乱した。まさにこの番号で今朝電話が掛かってきたのだ。
    おかしいおかしいおかしい。。。
    私は通話記録をとっていたのを思い出した。
    最初まで巻き戻す。
    、、、、、、、、、キュルキュルキュル、、、、、     ガチャ
    再生
    「ザ、、、ザザ、、、、、、、、はい。ありがとうございます。○○旅館です。」
    あれ、、?私は悪寒を感じた。若い女性だったはずなのに、声がまるで低い男性のような声になっている。
    「あ、すみません。求人広告を見た者ですが、まだ募集してますでしょうか?」
    「え、少々お待ち下さい。・・・・・・・・・・・・・・・・・・ザ、、、ザ、、ザザ、、、
    ・・い、・・・そう・・・・だ・・・・・・・・」
    ん??
    私はそこで何が話し合われてるのか聞こえた。
    巻き戻し、音声を大きくする。
    「え、少々お待ち下さい。・・・・・・・・・・・・・・・・・・ザ、、、ザ、、ザザ、、、
    ・・い、・・・そう・・・・だ・・・・・・・・」
    巻き戻す。
    ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ザ、、、ザ、、ザザ、、、
    、、むい、、、、こご、そう・・・・だ・・・・・・・・」
    巻き戻す。
    「さむい、、、こごえそうだ」
    子供の声が入っている。さらにその後ろで大勢の人間が唸っている声が聞こえる。
    うわぁ!!私は汗が滴った。。
    電話から離れる。すると通話記録がそのまま流れる。
    「あー、、ありがとうございます。こちらこそお願いしたいです。いつからこれますか?」
    「いつでも私は構いません」、、、
    記憶にある会話。しかし、私はおじさんと話をしていたはずだ。
    そこから流れる声は地面の下から響くような老人の声だった。
    「神尾くんね、、はやくいらっしゃい」
    そこで通話が途切れる。私の体中に冷や汗がながれおちる。
    外は土砂降りの雨である。金縛りにあったように動けなかったが私はようやく落ちついてきた。
    すると、そのまま通話記録が流れた。
    今朝、掛かってきた分だ。
    しかし、話し声は私のものだけだった。
    、、、、、、
    「死ね死ね死ね死ね死ね」
    「はい。今準備して出るところです。」
    「死ね死ね死ね死ね死ね」
    「あ、すみません、寝起きなので」
    「死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね
    死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね」
    「あ、、だいじょうぶです。でも、、ありがとうございます。」
    私は電話の電源ごとひきぬいた。
    かわいた喉を鳴らす。な、、、、なんだ、、、なんだこれ、、
    なんだよ!? どうなってんだ??
    私はそのとき手に求人ガイドを握っていた。
    震えながらそのページを探す。
    すると何かおかしい。      、、ん?
    手が震える。。そのページはあった。
    綺麗なはずなのにその旅館の1ページだけしわしわでなにかシミが大きく広がり少しはじが焦げている。
    どうみてもそこだけが古い紙質なのです。まるで数十年前の古雑誌のようでした。
    そしてそこには全焼して燃え落ちた旅館が写っていました。
    そこに記事が書いてありました。
    死者30数名。台所から出火したもよう。
    旅館の主人と思われる焼死体が台所でみつかったことから
    料理の際に炎を出したと思われる。泊まりに来ていた宿泊客達が逃げ遅れて炎にまかれて焼死。
    これ、、なんだ。。求人じゃない。。
    私は声もだせずにいた。求人雑誌が風にめくれている。
    私は痺れた頭で石のように動けなかった。
    そのときふいに雨足が弱くなった。。一瞬の静寂が私を包んだ。
    電話がなっている
    イイネ! 返信
  • [271] 小矢追淳二 2016/12/15 07:43

    続き

    30分ほど無言のまま、トラックは走っていた。そして市街も近くなったと言う事で、
    最後にどうしても聞いておきたい事を、俺はドライバーに聞いてみた。
    「あの、最初に乗せてもらった国道の近くに、山ありますよね?」
    「あぁ、それが?」
    「あそこで前に何か事件とかあったりしました?」
    「事件…?いやぁ聞かねぇなぁ…山つっても、3つくらい連なってるからなぁ、あの辺は。
    あ〜、でもあの辺の山で大分昔に、若い女が殺された事件があったとか…それくらいかぁ?
    あとは、普通にイノシシの被害だな。怖いぜ、野生のイノシシは」
    「女が殺されたところって」
    「トイレすか?」カズヤが俺の言葉に食い気味に入ってきた。
    「あぁ、確かそう。何で知ってる?」
    市街まで送ってもらった運転手に礼を言い、安心感からか、その日はホテルで爆睡した。
    翌日〜翌々日には、俺達は新幹線を乗り継いで地元に帰ったいた。
    なるべく思い出したくない悪夢の様な出来事だったが、時々思い出してしまう。
    あの一家は一体何だったのか?実在の変態一家なのか?幻なのか?この世の者ではないのか?
    あの山のトイレで確かに聞こえた女の子の泣き叫ぶ声は、何だったのか?
    ボロボロに朽ち果てたキャンピングカー、同じように朽ちた俺達のリュックは、一体何を意味するのか?
    「おっ♪ おっ♪ おま○こ おま○こ 舐めたいなっ♪ ペロペロ〜 ペロペロ〜」
    先日の合コンが上手く行った、カズヤのテンションが上がっている。たまに遊ぶ悪友の仲は今でも変わらない。
    コイツの底抜けに明るい性格に、あの悪夢の様な旅の出来事が、いくらか気持ち的に助けられた気がする。
    30にも手か届こうかとしている現在、俺達は無事に就職も出来(大分前ではあるが)、普通に暮らしている。
    カズヤは、未だにキャンピングカーを見ると駄目らしい。俺はあの「ミッ○ーマ○スのマーチ」がトラウマになっている。
    チャンララン チャンララン チャンラランララン チャンララン チャンララン チャンラランララン♪
    先日の合コンの際も、女性陣の中に1人この携帯着信音の子がおり、心臓が縮み上がったモノだ。
    今でもあの一家、とくに大男の口笛が夢に出てくる事がある。
    イイネ! 返信
  • [270] SS 2016/12/14 13:50

    続き

    駐車場から上りと下りに続く車道があり、そこを下れば確実に国道に出るはずだ。
    しかし、再び奴らのキャンピングカーに遭遇する危険性もあるので、あえて森を突っ切る事にした。
    街はそんなに遠くない程度に見えているし、周囲も明るいので、まず迷う可能性も少ない。
    俺達は無言のまま、森を歩いた。約2時間後。無事に国道に出る事が出来た。
    しかし、着替えもない、荷物もない。頭に思い浮かんだのは、あの親切なコンビニの店長だった。
    国道は、都会並みではないが、朝になり交通量が増えてきている。
    あんな目にあって、再びヒッチハイクするのは度胸がいったが、何とかトラックに乗せて貰える事になった。
    ドライバーは、俺達の汚れた姿に当初困惑していたが、事情を話すと快く乗せてくれた。
    事情と言っても、俺達が体験した事をそのまま話してもどうか、と思ったので、
    キャンプ中に山の中で迷った、と言う事にしておいた。運転手も、そのコンビニなら知っているし、良く寄るらしかった。
    約1時間後、俺達は例の店長のいるコンビニに到着した。店長はキャンピングカーの件を知っているので、
    そのまま俺達が酷い目にあった事を話したのだが、話してる最中に、店長は怪訝な顔をし始めた。
    「え?キャンピングカー? いや、俺はさぁ、君達があの時急に店を出て国道沿いを歩いて行くので、止めたんだよ。
    俺に気を使って、送ってもらうのが悪いので、歩いていったのかな、と。
    10mくらい追って行って、こっちが話しかけても君らがあんまり無視するもんだから、こっちも正直気ィ悪くしちゃってさ。どうしたのさ?(笑)」
    …どういう事なのか。俺達は、確かにあのキャンピングカーがコンビニに止まり、
    レジで会計も済ませているのを見ている。会計したのは店長だ。もう1人のバイトの子もいたが、あがったのか今はいない様だった。
    店長もグルか?? 不安が胸を過ぎった。カズヤと目を見合わせる。
    「すみません、ちょっとトイレに」とカズヤが言い、俺をトイレに連れ込む。
    「どう思う?」と俺。
    「店長がウソを言ってるとも思えんが、万が一、あいつらの関連者としたら、って事だろ?
    でも、何でそんな手の込んだ事する必要がある? みんなイカレてるとでも? まぁ、釈然とはしないよな。
    じゃあ、こうしよう。大事をとって、さっきの運ちゃんに乗せてもらわないか?」

    851: 本当にあった怖い名無し 投稿日:2009/12/24(木) 22:30:28
    それが1番良い方法に思えた。俺達の意見がまとまり、トイレを出ようとしたその瞬間、
    個室のトイレから水を流す音と共に、あのミッ○ーマ○スのマーチの口笛が聞こえてきた。
    周囲の明るさも手伝ってか、恐怖よりまず怒りがこみ上げて来た。それはカズヤも同じだった様だ。
    「開けろオラァ!!」とガンガンドアを叩くカズヤ。ドアが開く。
    「な…なんすか!?」制服を着た地元の高校生だった。
    「イヤ…ごめんごめん、ははは…」と苦笑するカズヤ。
    幸い、この騒ぎはトイレの外まで聞こえてはいない様子だった。
    男子高校生に侘びを入れて、俺達は店長と談笑するドライバーの所へ戻った。
    「店長さんに迷惑かけてもアレだし、お兄さん、街までお願いできませんかねっ これで!」
    と、ドライバーが吸っていた銘柄のタバコを1カートン、レジに置くカズヤ。交渉成立だった。
    例の変態一家の件で、警察に行こうとはさらさら思わなかった。あまりにも現実離れし過ぎており、
    俺達も早く忘れたかった。リュックに詰めた服が心残りではあったが…
    ドライバーのトラックが、市街に向かうのも幸運だった。タバコの贈り物で終始上機嫌で運転してくれた。
    いつの間にか、俺達は車内で寝ていた。ふと目が覚めると、ドライブインにトラックが停車していた。
    ドライバーが焼きソバを3人分買ってきてくれて、車内で食べた。
    車が走り出すと、カズヤは再び眠りに落ち、俺は再び眠れずに、窓の外を見ながら
    あの悪夢の様な出来事を思い返していた。一体、あいつらは何だったのか。トイレの女の子の泣き声は…
    「あっ!!」
    思案が吹き飛び、俺は思わず声を上げていた。

    852: 本当にあった怖い名無し 投稿日:2009/12/24(木) 22:31:11
    「どうした?」とドライバーのお兄さん。
    「止めて下さい!!」
    「は?」
    「すみません、すぐ済みます!!」
    「まさかここで降りるのか?まだ市街は先だぞ」と、しぶしぶトラックを止めてくれた。
    この問答でカズヤも起きたらしい。
    「どうした?」
    「あれ、見ろ」
    俺の指差した方を見て、カズヤが絶句した。朽ち果てたドライブインに、あのキャンピングカーが止まっていた。
    間違いない。色合い、形、フロントに描かれた十字架…しかし、何かがおかしかった。
    車体が何十年も経った様に、ボロボロに朽ち果てており、全てのタイヤがパンクし、窓ガラスも全て割れていた。
    「すみません、5分で戻ります、5分だけ時間下さい」
    とドライバーに説明し、トラックを路肩に止めてもらったまま、俺達はキャンピングカーへと向かった。
    「どういう事だよ…」とカズヤ。こっちが聞きたいくらいだった。
    近づいて確認したが、間違いなくあの変態一家のキャンピングカーだった。
    周囲の明るさ・車の通過する音などで安心感はあり、恐怖感よりも「なぜ?」と言う好奇心が勝っていた。
    錆付いたドアを引き開け、酷い匂いのする車内を覗き込む。

    853: 本当にあった怖い名無し 投稿日:2009/12/24(木) 22:32:00
    「オイオイオイオイ、リュック!!俺らのリュックじゃねぇか!!」カズヤが叫ぶ。
    …確かに俺達が車内に置いて逃げて来た、リュックが2つ置いてあった。
    しかし、車体と同様に、まるで何十年も放置されていたかの如く、ボロボロに朽ち果てていた。
    中身を確認すると、服や日用雑貨品も同様に朽ち果てていた。
    「どういう事だよ…」もう1度カズヤが呟いた。何が何だか、もはや脳は正常な思考が出来なかった。
    とにかく、一時も早くこの忌まわしいキャンピングカーから離れたかった。
    「行こう、行こう」カズヤも怯えている。車内を出ようとしたその時、
    キャンピングカーの1番置くのドアの奥で「ガタッ」と音がした。ドアは閉まっている。開ける勇気はない。
    俺達は恐怖で半ばパニックになっていたので、そう聴こえたかどうかは、今となっては分からないし、
    もしかしたら猫の鳴き声だったかもしれない。が、確かに、その奥のドアの向こうで、その時はそう聴こえたのだ。
    「マ ー マ ! ! 」
    俺達は叫びながらトラックに駆け戻った。すると、なぜかドライバーも顔が心なしか青ざめている風に見えた。
    無言でトラックを発進させるドライバー。
    「何かあったか?」「何かありました?」
    同時にドライバーと俺が声を発した。ドライバーは苦笑し、
    「いや…俺の見間違いかもしれないけどさ…あの廃車…お前ら以外に誰もいなかったよな?
    いや、居るわけないんだけどさ…いや、やっぱ良いわ」
    「気になります、言って下さいよ」とカズヤ。
    「いやさ…見えたような気がしたんだよ。カウボーイハット?って言うのか?
    日本で言ったら、ボーイスカウトが被るような。それを被った人影が見えた気が…
    でよ、何故かゾクッとしたその瞬間、俺の耳元で口笛が聴こえてよ…」
    「どんな感じの…口笛ですか?」
    「曲名は分かんねぇけど(口笛を吹く)こんな感じでよ…いやいやいや、何でもねぇんだよ! 俺も疲れてるのかね」
    運転手は笑っていたが、運転手が再現してみた口笛は、ミッ○ーマ○スのマーチだった。

    続く
    イイネ! 返信
  • [269] 小矢追淳二 2016/12/13 01:39

    続き


    男子トイレに誰かが入ってきた。声の様子からすると、父だ。
    「やぁ、気持ちが良いな。ハ〜レルヤ!!ハ〜レルヤ!!」と、どうやら小の方をしている様子だった。
    その後すぐに、個室に入る音と足音が複数聞こえた。双子のオッサンだろうか。
    最早、女の子の存在は完全にバレているはずだった。女子トイレに入った母の「紙が無い!」と言う声も聴こえた。
    女の子はまだ泣きじゃくっている。やがて、父も双子のオッサン達(恐らく)も、トイレを出て行った様子だった。
    おかしい。女の子に対しての変態一家の対応が無い。やがて、母も出て行って、変態一家の話し声が遠くになっていった。
    気づかないわけがない。現に女の子はまだ泣きじゃくっているのだ。
    俺とカズヤが怪訝な顔をしていると、父の声が聞こえた。
    「〜を待つ、もうすぐ来るから」と言っていた。何を待つ、のかは聞き取れなかった。
    どうやら双子のオッサンたちが、グズッている様子だった。
    やがて平手打ちの様な男が聴こえ、恐らく、双子のオッサンの泣き声が聴こえてきた。
    悪夢だった。楽しかったはずのヒッチハイクの旅が、なぜこんな事に…
    今まではあまりの突飛な展開に怯えるだけだったが、急にあの変態一家に対して怒りがこみ上げて来た。
    「あのキャンピングカーをブンどって、山を降りる手もあるな。あのジジィどもをブン殴ってでも。
    大男がいない今がチャンスじゃないのか?待ってるって、大男の事じゃないのか?」
    カズヤが小声で言った。しかし、俺は向こうが俺達に気がついてない以上、
    このまま隠れて、奴らが通り過ぎるのを待つほうが得策に思えた。
    女の子の事も気になる。奴らが去ったら、ドアを開けてでも確かめるつもりだった。
    その旨をカズヤに伝えると、しぶしぶ頷いた。それから15分程経った時。
    「〜ちゃん来たよ〜!(聞き取れない)」母の声がした。待っていた主が駐車場に到着したらしい。
    何やら談笑している声が聞こえるが、良く聞き取れない。再び、トイレに向かってくる足音が聴こえて来た。

    848: 本当にあった怖い名無し 投稿日:2009/12/24(木) 22:26:35
    ミッ○ーマ○スのマーチの口笛。アイツだ!! 軽快に口笛を吹きながら、大男が小を足しているらしい。
    女子トイレの女の子の泣き声が、一段と激しくなった。何故だ?何故気づかない?
    やがて、泣き叫ぶ声が断末魔の様な絶叫に変わり、フッと消えた。
    何かされたのか?見つかったのか!? しかし、大男は男子トイレににいるし、
    他の家族が女子トイレに入った形跡も無い。やがて、口笛と共に大男がトイレを出て行った。
    万が一女の子がトイレから連れ出されてはしないか、と心配になり、危険を顧みずに
    一瞬だけトイレの裏手から俺が顔を覗かせた。テンガロンハットにスーツ姿の、大男の歩く背中が見える。
    「ここだったよなぁぁぁぁぁぁぁァァ!!」
    ふいに、大男が叫んだ。俺は頭を引っ込めた。ついに見つかったか!? カズヤは木の棒を強く握り締めている。
    「そうだそうだ!!」
    「罪深かったよね!!」
    と父と母。双子のオッサンの笑い声。
    「泣き叫んだよなァァァァァァァァ!!」と、大男。
    「うんうん!!」
    「泣いた泣いた!!悔い改めた!!ハレルヤ!!」
    と、父と母。双子のオッサンの笑い声。
    何を言っているのか? どうやら俺達の事ではないらしいが…
    やがて、キャンピングカーのエンジン音が聴こえ、車は去ってった。
    辺りはもう完全に明るくなっていた。変態一家が去ったのを完全に確認して、俺は女子トイレに飛び込んだ。
    全ての個室を開けたが、誰もいない。鍵も全て壊れていた。そんな馬鹿な…
    後から女子トイレに入ってきたカズヤが、俺の肩を叩いて呟いた。
    「なぁ、お前も途中から薄々は気がついてたんだろ? 女の子なんて、最初からいなかったんだよ」
    2人して幻聴を聴いたとでも言うのだろうか。確かに、あの変態一家の女の子に対する反応が一切無かった事を考えると、
    それも頷けるのではあるが…しかし、あんなに鮮明に聴こえる幻聴などあるのだろうか…


    続く
    イイネ! 返信
  • [268] 小矢追淳二 2016/12/12 00:17

    続き


    ハッ、と目が覚めた。反射的に携帯を見る。午前4時。辺りはうっすらと明るくなって来ている。
    横を見ると、カズヤがいない。一瞬パニックになったら、俺の真後ろにカズヤは立っていた。
    「何やってるんだ?」と聞く。
    「起きたか…聞こえないか?」と、木の棒を持って何かを警戒している様子だった。
    「何が…」
    「シッ」
    かすかに遠くの方で音が聞こえた。口笛だった。ミッ○ーマ○スのマーチの。CDにも吹き込んでも良いくらいの、良く通る美音だ。
    しかし、俺達にとっては恐怖の音以外の何物でもなかった。
    「あの大男の…」
    「だよな」
    「探してるんだよ、俺らを!!」
    再び、俺たちは猛ダッシュで森の中へと駆け始めた。辺りがやや明るくなったせいか、以前よりは周囲が良く見える。
    躓いて転ぶ心配が減ったせいか、かなりの猛スピードで走った。
    20分くらい走っただろうか。少し開けた場所に出た。今は使われていない駐車場の様だった。
    街の景色が、木々越しにうっすらと見える。大分下ってこれたのだろうか。
    腹が痛い、とカズヤが言い出した。我慢が出来ないらしい。古びた駐車場の隅に、古びたトイレがあった。
    俺も多少もよおしてはいたのだが、大男がいつ追いついてくるかもしれないのに、個室に入る気にはなれなかった。
    俺がトイレの外で目を光らせている隙に、カズヤが個室で用を足し始めた。
    「紙はあるけどよ〜 ガピガピで、蚊とか張り付いてるよ…うぇっ 無いよりマシだけどよ〜」
    カズヤは文句を垂れながら糞も垂れ始めた。
    「なぁ…誰か泣いてるよな?」と個室の中から大声でカズヤが言い出した。
    「は?」
    「いや、隣の女子トイレだと思うんだが…女の子が泣いてねぇか?」

    846: 本当にあった怖い名無し 投稿日:2009/12/24(木) 22:24:27
    カズヤに言われて初めて気がつき、聴こえた。確かに女子トイレの中から女の泣き声がする…
    カズヤも俺も黙り込んだ。誰かが女子トイレに入っているのか?何故、泣いているのか?
    「なぁ…お前確認してくれよ。段々泣き声酷くなってるだろ…」
    正直、気味が悪かった。しかし、こんな山奥で女の子が寂れたトイレの個室で1人、
    泣いているのであれば、何か大事があったに違いない。俺は意を決して、女子トイレに入り、泣き声のする個室に向かい声をかけた。
    「すみません…どうかしましたか?」
    返事はなく、まだ泣き声だけが聴こえる。
    「体調でも悪いんですか、すみません、大丈夫ですか」
    泣き声が激しくなるばかりで、一向にこちらの問いかけに返事が帰ってこない。
    その時、駐車場の上に続く道から、車の音がした。
    「出ろ!!」俺は確信とも言える嫌な予感に襲われ、女子トイレを飛び出し、カズヤの個室のドアを叩いた。
    「何だよ」
    「車の音がする、万が一の事もあるから早く出ろ!!」
    「わ、分かった」
    数秒経って、青ざめた顔でカズヤがジーンズを履きながら出てきた。と、同時に駐車場に下ってくるキャンピングカーが見えた。
    「最悪だ…」
    今森を下る方に飛び出たら、確実にあの変態一家の視界に入る。選択肢は、唯一死角になっている、トイレの裏側に隠れる事しかなかった。
    女の子を気遣っている余裕は消え、俺達はトイレを出て、裏側で息を殺してジッとしていた。
    頼む、止まるなよ、そのまま行けよ、そのまま…
    「オイオイオイオイオイ、見つかったのか?」カズヤが早口で呟いた。
    キャンピングカーのエンジン音が、駐車場で止まったのだ。ドアを開ける音が聞こえ、トイレに向かって来る足音が聴こえ始めた。
    このトイレの裏側はすぐ5m程の崖になっており、足場は俺達が立つのがやっとだった。
    よほど何かがなければ、裏側まで見に来る事はないはずだ。もし俺達に気づいて近いづいて来ているのであれば、
    最悪の場合、崖を飛び降りる覚悟だった。飛び降りても怪我はしない程度の崖であり、やれない事はない。
    用を足しに来ただけであってくれ、頼む…俺達は祈るしかなかった。
    しかし、一向に女の子の泣き声が止まらない。あの子が変態一家にどうにかされるのではないか?それが気が気でならなかった。

    続く
    イイネ! 返信
  • [267] 小矢追淳二 2016/12/10 22:38

    続き

    「あの、ありがとうございます。もうここらで結構ですので…」
    キャンピングカーが発車して15分も経たないうちに、カズヤが口を開いた。
    しかし、父はしきりに俺達を引きとめ、母は「熊が出るから!今日と明日は!」と意味不明な事を言っていた。
    俺達は腰を浮かせ、本当にもう結構です、としきりに訴えかけたが、
    父は「せめて晩餐を食べていけ」と言って、降ろしてくれる気配はない。
    夜中の2時にもなろうかと言う時に、晩餐も晩飯も無いだろうと思うのだが…
    双子のオッサン達は、相変わらず無口で、今度は棒つきのペロペロキャンディを舐めている。
    「これ、マジでヤバイだろ」と、カズヤが小声で囁いてきた。
    俺は相槌を打った。しきりに父と母が話しかけてくるので、中々話せないのだ。
    1度、父の言葉が聞こえなかった時など「聞こえたか!!」とえらい剣幕で怒鳴られた。
    その時双子のオッサンが同時にケタケタ笑い出し、俺達はいよいよ「ヤバイ」と確信した。
    キャンピングカーが、国道を逸れて山道に入ろうとしたので、流石に俺達は立ち上がった。
    「すみません、本当にここで。ありがとうございました」と運転席に駆け寄った。
    父は延々と「晩餐の用意が出来ているから」と言って聞こうとしない。
    母も、素晴らしく美味しい晩餐だから、是非に、と引き止める。
    俺らは小声で話し合った。いざとなったら、逃げるぞ、と。
    流石に走行中は危ないので、車が止まったら逃げよう、と。
    やがて、キャンピングカーは山道を30分ほど走り、小川がある開けた場所に停車した。
    「着いたぞ」と父。その時、キャンピングカーの1番後部のドア(俺達はトイレと思っていた)から
    「キャッキャッ」と子供の様な笑い声が聞こえた。まだ誰かが乗っていたか!? その事に心底ゾッとした。
    「マモルもお腹すいたよねー」と母。マモル…家族の中では、唯一マシな名前だ。幼い子供なのだろうか。
    すると、今まで無口だった双子のオッサン達が、口をそろえて
    「マモルは出したら、だぁ・あぁ・めぇ!!」とハモりながら叫んだ。
    「そうね、マモルはお体が弱いからねー」と母。
    「あーっはっはっはっ!!」といきなり爆笑する父。
    「ヤバイ、こいつらヤバイ。フルスロットル(カズヤは、イッてるヤツや危ないヤツを常日頃からそういう隠語で呼んでいた)」

    843: 本当にあった怖い名無し 投稿日:2009/12/24(木) 22:20:19
    俺達は、車の外に降りた。良く見ると、男が川の傍で焚き火をしていた。まだ仲間がいたのか…と、絶望的な気持ちになった。
    異様に背が高く、ゴツい。2m近くはあるだろうか。父と同じテンガロンハットの様な帽子をかぶり、スーツと言う異様な出で立ちだ。
    帽子を目深に被っており、表情が一切見えない。
    焚き火に浮かび上がった、キャンピングカーのフロントに描かれた十字架も、何か不気味だった。
    ミッ○ーマ○スのマーチ、の口笛を吹きながら、男は大型のナイフで何かを解体していた。
    毛に覆われた足から見ると、どうやら動物の様だった。イノシシか、野犬か…どっちにしろ、そんなモノを食わさせるのは御免だった。
    俺達は逃げ出す算段をしていたが、予想外の大男の出現、大型のナイフを見て、萎縮してしまった。
    「さぁさ、席に着こうか!」と父。大男がナイフを置き、傍でグツグツ煮えている鍋に味付けをしている様子だった。
    「あの、しょんべんしてきます」とカズヤ。「逃げよう」と言う事だろう。俺も行く事にした。
    「早くね〜」と母。俺達はキャンピングカーの横を通り、森に入って逃げようとしたその時、
    キャンピングカーの後部の窓に、異様におでこが突出し、両目の位置が異様に低く、
    両手もパンパンに膨れ上がった容姿をしたモノが、バン!と顔と両手を貼り付けて叫んだ。
    「マーマ!!」
    もはや限界だった。俺達は脱兎の如く森へと逃げ込んだ。

    844: 本当にあった怖い名無し 投稿日:2009/12/24(木) 22:21:39
    後方で、父と母が何か叫んでいたが、気にする余裕などなかった。
    「ヤバイヤバイヤバイ」とカズヤは呟きながら森の中を走っている。お互い、何度も転んだ。
    とにかく下って県道に出よう、と小さなペンライト片手にがむしゃらに森を下へ下へと走っていった。
    考えが甘かった。小川のあった広場からも、町の明かりは近くに見えた気がしたのだが、
    1時間ほど激走しても、一向に明かりが見えてこない。完全に道に迷ったのだ。
    心臓と手足が根をあげ、俺達はその場にへたり込んだ。
    「あのホラー一家、追ってくると思うか?」とカズヤ。
    「俺達を食うわけでもなしに、そこは追ってこないだろ。映画じゃあるまいし。
    ただの少しおかしい変人一家だろう。最後に見たヤツは、ちょっとチビりそうになったけど…」
    「荷物…どうするか」
    「幸い、金と携帯は身につけてたしな…服は、残念だけど諦めるか」
    「マジハンパねぇw」
    「はははw」
    俺達は精神も極限状態にあったのか、なぜかおかしさがこみ上げてきた。
    ひとしきり爆笑した後、森独特のむせ返る様な濃い匂いと、周囲が一切見えない暗闇に、現実に戻された。
    変態一家から逃げたのは良いが、ここで遭難しては話にならない。
    樹海じゃあるまいし、まず遭難はしないだろうが、万が一の事も頭に思い浮かんだ。
    「朝まで待った方が良くないか?さっきのババァじゃないけど、熊まではいかなくとも、野犬とかいたらな…」
    俺は一刻も早く下りたかったが、真っ暗闇の中をがむしゃらに進んで、さっきの川原に戻っても恐ろしいので、
    腰を下ろせそうな倒れた古木に座り、休憩する事にした。一時はお互いあーだこーだと喋っていたが、
    極端なストレスと疲労の為か、お互いにうつらうつらと意識が飛ぶようになってきた。

    続く
    イイネ! 返信
  • [266] 小矢追淳二 2016/12/09 03:07

    続き


    「おっ♪ おっ♪ おま○こ おま○こ 舐めたいなっ♪ ペロペロ〜 ペロペロ〜」
    男友達だけの集まりになると、いつもカズヤは卑猥な歌を歌いだす。その夜もカズヤは歌いだした。
    その日の夜は、2時間前に寂れた国道沿いのコンビニで降ろしてもらって以来、
    中々車が止まらず、それに加えてあまりの蒸し暑さに俺達はグロッキー状態だった。
    暑さと疲労の為か、俺達は変なテンションになっていた。
    「こんな田舎のコンビニに降ろされたんじゃ、たまったもんじゃないよな。
    これなら、さっきの人の家に無理言って泊めてもらえば良かったかなぁ?」とカズヤ。
    確かに先ほどのドライバーは、このコンビニから車で10分程行った所に家があるらしい。
    しかし、どこの家かも分かるはずもなく、言っても仕方が無い事だった。
    時刻は深夜12時を少し過ぎた所だった。俺たちは30分交代で、車に手を上げるヤツ、
    コンビニで涼むヤツ、に別れることにした。コンビニの店長にも事情を説明したら
    「頑張ってね。最悪、どうしても立ち往生したら俺が市内まで送ってやるよ」と言ってくれた。こういう田舎の暖かい人の心は実に嬉しい。
    それからいよいよ1時間半も過ぎたが、一向に車がつかまらない。と言うか、ほとんど通らない。
    カズヤも店長とかなり意気投合し、いよいよ店長の行為に甘えるか、と思っていたその時、
    1台のキャンピングカーがコンビニの駐車場に停車した。これが、あの忘れえぬ悪夢の始まりだった。

    839: 本当にあった怖い名無し 投稿日:2009/12/24(木) 22:15:34
    運転席のドアが開き、コンビニに年齢はおよそ60代くらいかと思われる男性が入ってきた。
    男の服装は、カウボーイがかぶるようなツバ広の防止に、スーツ姿、と言う奇妙なモノだった。
    俺はその時、丁度コンビニの中におり、何ともなくその男性の様子を見ていた。
    買い物籠に、やたらと大量の絆創膏などを放り込んでいる。コーラの1.5?のペットボトルを2本も投げ入れていた。
    その男を、会計をしている最中、じっと立ち読みをしている俺の方を凝視していた。
    何となく気持ちが悪かったので、視線を感じながらも俺は無視して本を読んでいた。
    やがて男は店を出た。そろそろ交代の時間なので、カズヤの所に行こうとすると、駐車場でカズヤが男と話をしていた。
    「おい、乗せてくれるってよ!」
    どうやら、そういう事らしい。俺は当初は男に何か気持ち悪さは感じていたのだが、
    間近で見ると、人の良さそうな普通のおじさんに見えた。俺は疲労や眠気の為にほとんど思考が出来ず、
    「はは〜ん、アウトドア派(キャンピングカー)だからああいう帽子か」などと言う良く分からない納得を自分にさせた。
    キャンピングカーに乗り込んだ時、「しまった」と思った。
    「おかしい」のだ。「何が」と言われても「おかしいからおかしい」としか書き様がないかも知れない。
    これは感覚の問題なのだから…ドライバーには家族がいた。もちろん、
    キャンピングカーと言うことで、中に同乗者が居る事は予想はしていたのだが。
    父 ドライバー およそ60代
    母 助手席に座る。見た目70代
    双子の息子 どう見ても40過ぎ

    840: 本当にあった怖い名無し 投稿日:2009/12/24(木) 22:16:30
    人間は、予想していなかったモノを見ると、一瞬思考が止まる。
    まず車内に入って目に飛び込んで来たのは、まったく同じギンガムチェックのシャツ、
    同じスラックス、同じ靴、同じ髪型(頭頂ハゲ)、同じ姿勢で座る同じ顔の双子の中年のオッサンだった。
    カズヤも絶句していた様子だった。いや、別にこういう双子が居てもおかしくはない、
    おかしくもないし悪くもないのだが…あの異様な雰囲気は、実際その場で目にしてみないと伝えられない。
    「早く座って」と父に言われるがまま、俺たちはその家族の雰囲気に呑まれるかの様に、車内に腰を下ろした。
    まず、俺達は家族に挨拶をし、父が運転をしながら、自分の家族の簡単な説明を始めた。
    母が助手席で前を見て座っている時は良く分からなかったが、母も異様だった。
    ウェディングドレスのような、真っ白なサマーワンピース。顔のメイクは「バカ殿か」と
    見まがうほどの白粉ベタ塗り。極めつけは母の名前で、「聖(セント)ジョセフィーヌ」。
    父はちなみに「聖(セント)ジョージ」と言うらしい。
    双子にも言葉を失った。名前が「赤」と「青」と言うらしいのだ。
    赤ら顔のオッサンは「赤」で、ほっぺたに青痣があるオッサンは「青」。普通、自分の子供にこんな名前をつけるだろうか?
    俺達はこの時点で目配せをし、適当な所で早く降ろしてもらう決意をしていた。狂っている。
    俺達には主に父と母が話しかけて来て、俺達も気もそぞれで適当な答えをしていた。
    双子はまったく喋らず、まったく同じ姿勢、同じペースでコーラのペットボトルをラッパ飲みしていた。
    ゲップまで同じタイミングで出された時は、背筋が凍り、もう限界だと思った。

    続く
    イイネ! 返信
  • [265] 小矢追淳二 2016/12/08 13:00

    今から7年ほど前の話になる。俺は大学を卒業したが、就職も決まっていない有様だった。
    生来、追い詰められないと動かないタイプで(テストも一夜漬け対タイプだ)、
    「まぁ何とかなるだろう」とお気楽に自分に言い聞かせ、バイトを続けていた。
    そんなその年の真夏。悪友のカズヤ(仮名)と家でダラダラ話していると、
    なぜか「ヒッチハイクで日本を横断しよう」と言う話に飛び、その計画に熱中する事になった。
    その前に、この悪友の紹介を簡単に済ませたいと思う。このカズヤも俺と同じ大学で、
    入学の時期に知り合った。コイツはとんでもない女好きで、頭と下半身は別、と言う典型的なヤツだ。
    だが、根は底抜けに明るく、裏表も無い男なので、女関係でトラブルは抱えても、男友達は多かった。
    そんな中でも、カズヤは俺と1番ウマが合った。そこまで明朗快活ではない俺とはほぼ正反対の性格なのだが。
    ヒッチハイクの計画の話に戻そう。計画と行ってもズサンなモノであり、
    まず北海道まで空路で行き、そこからヒッチハイクで地元の九州に戻ってくる、と言う計画だった。
    カズヤは「通った地方の、最低でも1人の女と合体する!」と女好きならではの下世話な目的もあったようだ。
    まぁ、俺も旅の楽しみだけではなく、そういう期待もしていたのだが…
    カズヤは長髪を後ろで束ね、一見バーテン風の優男なので(実際クラブでバイトをしていた)コイツとナンパに行って良い思いは確かにした事があった。
    そんなこんなで、バイトの長期休暇申請や(俺は丁度別のバイトを探す意思があったので辞め、カズヤは休暇をもらった)、
    北海道までの航空券、巨大なリュックに詰めた着替え、現金などを用意し、計画から3週間後には俺達は機上にいた。
    札幌に到着し、昼食を済ませて市内を散策した。慣れない飛行機に乗ったせいか、
    俺は疲れのせいで夕方にはホテルに戻り、カズヤは夜の街に消えていった。
    その日はカズヤは帰ってこず、翌朝ホテルのロビーで再開した。
    にやついて指でワッカをつくり、OKマークをしている。昨夜はどうやらナンパした女と上手く行った様だ。

    837: 本当にあった怖い名無し 投稿日:2009/12/24(木) 22:13:11
    さぁ、いよいよヒッチハイクの始まりだ。ヒッチハイクなど2人とも人生で初めての体験で、流石にウキウキしていた。
    何日までにこの距離まで行く、など綿密な計画はなく、ただ「行ってくれるとこまで」という大雑把な計画だ。
    まぁしかし、そうそう止まってくれるものではなかった。1時間ほど粘ったが、一向に止まってくれない。
    昼より夜の方が止まってくれやすいんだろう、等と話していると、ようやく開始から1時間半後に最初の車が止まってくれた。
    同じ市内までだったが、南下するので距離を稼いだのは稼いだ。距離が短くても、嬉しいものだ。
    夜の方が止まってくれやすいのでは?と言う想像は意外に当たりだった。
    1番多かったのが、長距離トラックだ。距離も稼げるし、まず悪い人はいないし、かなり効率が良かった。
    3日目にもなると、俺達は慣れたもので、長距離トラックのお兄さん用にはタバコ等のお土産、
    普通車の一般人には飴玉等のお土産、と勝手に決め、コンビニで事前に買っていた。
    特にタバコは喜ばれた。普通車に乗った時も、喋り好きなカズヤのおかげで、常に車内は笑いに満ちていた。
    女の子2〜3人組の車もあったが、正直、良い思いは何度かしたものだった。
    4日目には本州に到達していた。コツがつかめてきた俺達は、
    その土地の名物に舌鼓を打ったり、一期一会の出会いを楽しんだりと余裕も出てきていた。
    銭湯を見つけなるべく毎日風呂には入り、宿泊も2日に1度ネカフェに泊まると決め、経費を節約していた。
    ご好意で、ドライバーの家に泊めてもらう事もあり、その時は本当にありがたかった。
    しかし、2人共々に生涯トラウマになるであろう恐怖の体験が、出発から約2週間後、甲信地方の山深い田舎で起こったのだった。

    続く
    イイネ! 返信
  • [264] 小矢追淳二 2016/12/07 11:37

    続き


    「翌日、日が真上に昇るまでまって、あの木を見に行ったよ。
    木の表面が、2cm程陥没してて、1m60cmくらいの人型になってたな。
    そして、頭部らしき箇所に俺のナイフが突き立ってたな」
    やがて、夕方になり旦那の知り合いの業者がやってきて、クヌギを木を切り始めたと言う。
    「最初にチェーンソーが入るときと、木が倒れる時。完全に聴こえたんだよ。女の絶叫がね。
    俺と彼女と旦那だけ聴こえた様子だったな。
    で、切り株と根っこまで根こそぎトラックに積んでたんだが、小動物の骨が出るわ出るわ。
    業者も帰りたがってたな。さっきの人型と良い、そりゃ気味悪いよな。
    まぁ、人骨が出なかっただけマシかぁ?」
    後日、隣の夫婦がそれなりの品物を持って謝罪に訪れたと言う。
    「受け取ってすぐ捨てたけどなぁ。やっぱり、色々勘ぐってしまうよな」
    そして、すぐ夫婦は引っ越し、叔父たちもその後すぐにマンションを引き払ったらしい。
    暫くして、叔父は彼女とは一時別れてしまったそうだ。
    「そんな事もあったねぇ」
    紅茶を飲みながら、叔母が懐かしそうに言った。
    「そうだな…あぁ、そう言えば…」
    叔父が庭の木を見つめて呟いた。
    「ウチにもオーク、ナラのカシワの木があったな。縁起物だから、新築の時植えたんだがな。
    まぁ、アレだな。モノは使い様と言うか…人間の心次第と言う事かな。
    それがプラスかマイナスかで。有り様が変わってくるからな」
    そして、叔父の話は終わった。
    今度来るときは、カシワの葉で包んだ柏餅をご馳走してもらい事を約束し、
    その日は叔父夫婦の家を後にした。
    (完)
    イイネ! 返信
  • [263] 小矢追淳二 2016/12/06 01:18

    続き

    「ザッ ザッ ザッ」
    と、森の奥から何かが近づいてくる音が聞こえた。野生の動物か、野犬か。
    コックリコックリと船を漕いでいた叔父も、その音に目が覚めた。
    「明らかに人間に近い足音と気づいた途端、ゾッとしたね」
    最初は奥さんが来た、と思ったらしいが、あの電話を終えてからこんな短時間でここまで
    来れるわけがない。
    いや、あの電話は実は近くからかけていたとしたら…もしくは、他に仲間がいたとしたら…?
    叔父は寒さなどお構い無しに、全ての窓や戸を開け、アウトドア用のナイフを手に、臨戦態勢で
    息を殺していた。
    「ザッ ザッ ザッ」と言う音は一向に止む事はなく、明らかにこの小屋に向かっている。
    「それから10分後くらいかな。もうな、普通にこの小屋を訪ねて来るように、玄関の戸に
    立ったんだよ。足音の主が」
    「○○?(妻の名前)」
    と旦那が叫んだ。が、すぐ、驚愕から恐怖の悲鳴に変わった。
    「奥さんの様で、奥さんじゃないんだよ。顔は、ほとんど同じなんだな。だが生気が無いと言うか。
    で、この真冬に素ッ裸だぜ? でな、最初は旦那は(妻の様なモノ)の裸に驚いて声を上げたと
    思ったんだよ。
    違うんだよな。肌の質感も色も、木、そのものなんだよ。で、もっと怖かったのは、
    左右の手足が逆についてるんだよ。分かるか? それが玄関に上がって来ようとしてな、
    右足と左足が逆なもんだから、動きがおかしいんだよ。上がり口に何度もつっかえたりして。
    それが何よりおそろしくてなぁ」
    確かに想像するだけでもイヤな造形だ。

    「彼女は絶叫してたな。旦那も。明らかに、妻じゃないって確信したと思う。
    でもな、一応人間の形はしてるんだからさ。刺せないぜぇ?なかなかそんなモノを。
    やっぱ、人間の心ってリミッターあるからさ。もし人間だったらどうしよう、とか思うよ」
    それは確かに分かるような気がする。
    「でな、その(妻の様なモノ)がとうとう小屋の中に入ってきて、何か言うんだよ。
    それも、何言ってるか分からなくてな。カブトムシの羽音みたいな音を喉から出して。
    で、左右逆の足でヨタヨタしながら、俺の方に向かって来るわけだ。
    しかし、俺も真面目なもんだよなぁ。
    それでも最後に一応、○○さんですかっ!?って聞いたよ。さっきのリミッターの話な。
    それでも、ソイツは虫の羽音の様な耳障りな音を喉から発して、これまた左右逆の両腕を伸ばし、
    俺の首を絞めてきたもんだから、思いっきりソイツの腹を前蹴りで蹴ったよ。
    すると、腹がボロボロ崩れて、樹液みたいな液を撒き散らし、腹に空洞が出来てやんの。
    それで決心出来たんだよな。あぁ、これは人間じゃないから、ヤッちゃって良いんだ、ってな」
    と、豪快に笑いながら叔父は言った。こういう時の度胸を決めた叔父は、本当に頼もしく見える。
    不気味な声を発しながら、ソイツは起き上がって来たらしい。
    叔父は、ナイフをソイツの脳天に1発、もう1度蹴り倒したら、空洞の腹を貫通し、
    胴体が千切れたらしい。彼女と旦那の絶叫が一段と激しくなったと言う。
    「で、腹の中から異臭のする泥やら、ムカデやら色んな虫がワラワラ出てきてさ。
    もう部屋中パニックだったな。床に倒れたソイツの人型も段々ボロボロと崩壊していって、
    床には泥と虫だけが残ったね。
    気持ち悪くて、ほとんど暖炉に放り込んだな。突立てたナイフがいつの間にか消えてたのが
    気になったけどな」

    その凄惨なな格闘が終わり、全ての残骸を暖炉に投げ込んだ後、すぐさま旦那に妻へと
    電話をさせたらしい。妻はすぐに出た。
    「妻は死んでいた!とかやはりそういうのは心配するだろ、形が形だけに。元気だったけどな。
    まぁキョトンとしてたな。
    流石に今起きた事は言わなかったけどな。後で旦那が話したかどうかは知らないが…
    でも、流石に全て終わった後に恐怖が襲って来たね。手足とか震えて来てな。
    彼女はずっと泣いてたな。
    で、1番怖かったのは、彼女が暫くして変な事言い始めたんだよな。
    何でアレに○○さんですか?と問いかけたのか、と。
    変な事聞くなぁ、と思ったね。顔ははどう見てもあの奥さんなんだから」
    「で、どういう事だったのかな?」
    俺が聞くと、叔父は気味が悪そうにこう言った。
    「よく、自分の形をしたモノの頭にナイフなんて突き立てられたね、って彼女はこう言ったんだよ。
    つまり、彼女にはあの化け物が、俺の姿に見えてたんだよな」
    叔父が想像する所は、次の様な事らしい。
    古代ドルイドの秘儀で、オークの木に邪悪な生命が宿った。
    それに、あの妻の怨念も乗り移り、生贄が止まった事に見兼ねて、自ら実体化して現れた、と。
    そして、見る対象者によっては、あの化け物が様々な姿形に見えるのではないか、と。
    イイネ! 返信
  • [262] 小矢追淳二 2016/12/05 04:52

    続き


    前にも述べた通り、この夫婦には重い病気の息子がいる。
    治療法は、病の進行を遅らせる、強い副作用のある方法しかない。
    あらゆる方法を試したが、病は一向に癒える気配は無かった。
    そんな藁にも縋る思いも極まった時の事。
    15年前、仕事先で訪れたウェールズのある村で、ドルイドの呪術師に出会ったと言う。
    そのドルイドの呪力が篭ったオークの木の苗を、大枚叩いて旦那は買い、日本へ持ち帰った。
    そのドルイドから授けられた秘術は、毎月6日に、白い衣装を見に付けオークの木に登り、
    ドルイドから譲り受けた(これも大枚叩いて買ったらしい)鎌でオークに寄生している
    ヤドリギの枝を切り取り、「生贄」をオークの木に捧げる、と言うものらしい。
    その祭儀の見返りの願いは言うまでも無く、息子の病を治す事、だ。
    「確かに、その日は1月6日だったなぁ…」
    「生贄って…」
    俺は恐る恐る叔父に聞いた。
    「最初は、小動物とかだったらしいよ。ハムスターとか、野良猫とか、犬とかな。
    クヌギの木の根元に埋めて。
    心なしか、大きな動物になればなる程、息子の病が(良くなっている様な気がした)らしい。
    まぁ、そのドルイドに1杯食わされたんだろうけどな。でも病気の子供を持つ、
    悲しい親の愛とは言えども、あんまりじゃないか?俺らを焼き殺そうとするなんて」
    叔父は笑いながら言った。それから、懇々とその旦那を説き伏せたらしい。
    人を呪わば穴二つ。そんな事をしても、何も良い事はない。オカルト方面に詳しい叔父だけに、
    様々な知識も動員して、旦那を説き伏せた。
    「50にもなろうかと言うオッサンが、声上げて泣いてたなぁ。まぁ、俺らも殺されそうにはなった
    とは言え、その旦那の気持ちも分からんでもないからなぁ。同情心もあって。
    彼女も少しもらい泣きしてたかな。
    旦那も、クヌギも別荘も処分する事を約束してくれてな。
    明日にでも、特にクヌギの処分は俺ら同伴で」
    「じゃあ、この件は、警察沙汰にもならずに一件落着、と」
    「ところがなぁ。あのオークは(本物)だったんだなぁ」


    何とか旦那を説き伏せて、暖かいコーヒーを飲みながら、3人が落ち着いてきたその時。
    旦那の携帯が鳴った。奥さんの声が否が応でも聞こえてきたと言う。ヒステリックな金切り声だ。
    明らかに「殺したの?捧げたの?やったの?」と傍の叔父にも聞こえて来たと言う。
    あんなに温厚に見えた奥さんの方が、実はこの件では主導権を握っていたのだ、と思い
    ゾッとしたと言う。
    奥さんは東京のマンションから電話をしているらしい。
    旦那は、ある程度は言い返してはいたが、奥さんの凄い剣幕に終始押され気味だったと言う。
    たまりかねて叔父が電話を変わり、物凄い口論となった。それは、一時は殺されそうになり、
    まだ片方が殺意を剥き出しにしているのだから、激しい感情のぶつかり合いになるのは
    至極当然だろう。
    叔父の彼女も、先ほどの涙とはうって代わり、叔父に負けじと口論に加わったと言う。
    「こりゃ将来尻に敷かれるなぁ、と思ったね、その時は」
    叔父は苦笑しながら言った。確かに今は尻に敷かれている様だ。
    やがて、叔父がたまりかねて、警察、裁判沙汰、をちらつかせる様になると、やっと奥さんも
    大人しくなり、しぶしぶ旦那の話も聞くようになってきたと言う。
    一応、いざこざの一段落はついた。
    流石にその日は深夜になっていたので、その別荘で休む事になった。
    「一応さ、話はついたけど、まさか眠るわけには行かないよな。あんな事されそうになって」
    暖炉の広間で、叔父と彼女が身を寄せ合って座り、離れた場所に、旦那が申し訳なさそうに
    座っていた。
    「明日、旦那の知り合いの業者に手伝ってもらい、クヌギの木は切り倒す事を約束してもらった
    からさ、それを見届けるまではな」
    3人ともその日は寝ずに、朝を迎える予定だった。夜もさらに深まった午前3時頃だったと言う。
    イイネ! 返信
  • [261] 小矢追淳二 2016/12/04 02:01

    【ドルイド信仰】
    ドルイドとは、ケルト人社会における祭司のこと。
    Daru-vid「オーク(ブナ科の植物)の賢者」の意味。
    ドルイドの宗教上の特徴の一つは、森や木々との関係である。


    ドルイドはヤドリギの巻きついたオークの木の下で儀式を執り行っていた。
    柳の枝や干し草で作った編み細工の人形を作り、その中に生きたまま人間を閉じ込めて、
    火をつけて焼き殺し、
    その命を神に奉げるという、人身御供の祭儀も行っていた。
    刑罰の一種として、森林を違法に伐採した場合、樹木に負わせた傷と同じ傷を犯人に
    負わせて木に縛り付け、樹木が許してくれるまで磔にするという刑罰もあった。


    自分の叔父は、仕事柄、船で海外に行く事が多かった。詳しい事は言えないが、
    いわゆる技術士だ。
    1年の6〜7割は海外(特に北欧)で仕事をしている様な人で、日本に帰って来ている時は
    良く遊んでもらったものだ。
    今は既婚で、引退して悠々自適な生活を送っており、知識も豊富でバイタリティ溢れる快男児だ。
    以前も、2話程、叔父関連の話を書いているはずだ。その叔父に、こんな恐ろしい話を聞いた。
    当時叔父は30代で、彼女とマンションに同棲しており、幸せに暮らしていた。
    ひょんな事から、お隣さんと親しくなったらしい。お隣さんは年配の夫婦で、病気の子供が1人。
    旦那さんも仕事柄、海外に飛ぶ事が多いとの事だった。話題も合うと言う事で、叔父とは意気投合し、
    その奥さんも温厚で、夕食を呼んだり呼ばれたりする仲にまでなったそうだ。ある年の真冬。
    そのご夫婦と賑やかな食卓を共にしていると、そのご夫婦の別荘の話題になった。
    何でも、関東近郊の閑静な山奥に、別荘を1つ所有しているらしい。
    近くには小川もあり、魚等も釣れ、年に1度は家族で、病気の息子の療養がてら遊びに行くらしい。
    どうやら今年は仕事の関係で行けなくなったらしく、叔父達に、良かったら使ってくれても良い、
    との事だった。
    アウトドア好きな叔父は、喜んで使わせてもらう事になった。
    そんな叔父と趣味も合った彼女も賛同したらしい。
    そして、翌年の年明け、叔父は彼女と共に、その別荘へと向かった。

    あまり舗装されていない山道を、40分ほど登った場所にその別荘はあった。
    別荘を目にした途端、彼女の溜息が聞こえたそうだ。感動ではない方の。
    「ホント、掘っ立て小屋みたいな感じだよ。
    こっちは小洒落たロッジ的なモノを想像してたんだけどな。
    あの夫婦の説明を聞く限り、誰でもそう思うと思うよ」
    叔父は苦笑しながら言った。とにかく、その「別荘」はお粗末なモノだったらしい。
    木造平屋で、狭い玄関。猫の額ほどのキッチン。古びた押入れに入った布団。
    暖炉がある広間がやや広い事だけは救いだったらしい。
    来てしまったモノは仕方がないので、なるべく自分達が楽しむ事にしたと言う。
    昼は川魚を釣ったり、近辺の林を散策し、野草を採ったり。
    それらは夕飯には天ぷらとして食卓に並び、それはそれで楽しい夕飯だったそうだ。
    「野草を採ってる時に、かろうじて遠くに別荘が見えるくらいの距離の、少しだけ森の深くに
    行ったんだが…
    その時にちょっと気になるモノがあってな。ナラ(楢)の木があったんだよ。クヌギなんだけどな。
    この森にクヌギの木ってちょっと浮いててな。周りは違う種類ばかりだし、明らかにそこだけ
    近年植林したんじゃないかなぁ。上にヤドリギも撒きついてたよ。
    クヌギは10年も経てば、大きくなるからな。
    で、気味が悪いのが、そのクヌギに何か文字が彫ってあってな。
    オガム文字って言ってな。古代のドルイド(上記参照)等が祭祀に使ってた文字なんだよ。
    横線を基準と見て、その上下に刻んだ縦や斜めの直線1-5本ほどで構成されててな、
    パッと見文字には見えないんだが…
    ま、何て書いてあるかまでは分からんが、不気味ではあるよな。日本だぜここは」
    叔父の様にオカルト方面に知識がある人から見たら、確かに不気味なのだろう。
    そんなこんなで、その日の就寝の時に事件は起こった。
    叔父が窓や玄関の戸締りを確認しようとしていた時の事だった。
    「何で最初に気がつかなかったんだろうな。鍵がな、外側にもついてるんだよ。」
    つまり、窓の内鍵とは別に、窓の外側にも鍵がついているのだ。玄関の入り口の戸にも。
    「これはヤバイ、と思ったな。部屋の中に家具が異様に少ないのも実は気になってたんだよ。
    生活に必要最小限のモノだけ…それも、全て木造で燃えやすく…パッと思い浮かんだのが、
    ウィッカーマンだな」

    映画にもなり、近年リメイクもされたのでご存知の人も多いと思うが、上記でも書いた様に、
    「柳の枝や干し草で作った編み細工の人形を作り、その中に生きたまま人間を閉じ込めて、
    火をつけて焼き殺し、神に捧げる」
    と言うおぞましい秘儀が、古代ドルイドの祭儀であるのだ。
    それを英語では「ウィッカーマン(wicker man)」、編み細工(wick)で出来た人型の構造物、
    と言うらしい。
    「彼女を不安がらせない様にその事や鍵の事も秘密にし、俺だけ起きてる事にしたよ。
    全部の内鍵開けてな。そしたら、夜中だよ」
    砂利を踏む音と、人の気配が別荘の外でした。すかさず窓を開ける。
    例のお隣の夫婦の旦那だった。
    「何をなさってるんですか?」
    叔父に急に見つかり、厳しい声を投げかけられた旦那は、驚愕の表情でしどろもどろだったと言う。
    「いや、その…大丈夫かなと…」
    「大丈夫じゃなないですよ。その缶は何です?灯油の缶じゃないんですか?」
    「い…いや…ストーブの灯油を切らしちゃいかんと思ってね…」
    「暖炉がありますよね?」
    「いや…まぁ」
    叔父は、外鍵の事を厳しく追及した。旦那が弁解するには、この別荘も人から譲り受けたモノで、
    外鍵はその当時からついていたらしい。
    「信じるわけないわな。そんな気味の悪い家で誰が泊まりたがる?」
    叔父はまったく旦那の言う事は信用しなかった。外の騒ぎで、寝ていた彼女も置きだし、
    不安そうな顔を覗かせていた。
    「○○さん(旦那)…あんた、ドルイドの何かやってるんじゃないでしょうね」
    「は…? 何ですかそれは」
    「とぼけたって良いんですよ?裏の森のクヌギ。良い薪になりそうだなぁ」
    「な…何を言うんですか!!」
    「あんた、俺らをウィッカーマンにして、捧げようとしたんじゃないのかっ!!」
    「…」
    本当の事を言わないのなら、クヌギを切り倒す、と脅した叔父に対し、旦那は全てを話し始めた。


    続く
    イイネ! 返信
  • [260] 小矢追淳二 2016/12/03 02:37

    自分は消防時代兵庫県に住んでいました。
     その頃通っていた学校ではウサギ4匹とセキセイインコ3匹を
    飼っておりました。両方とも後者の隣に設置した、「飼育小屋」に
    飼われており、当時2年生だった我々は休み時間になる毎に押しかけました。たまに鉢合わせた上級生の飼育係が小屋で彼らに餌をやる姿を見て、上級生になって自分たちがその行為を行うことを夢想し憧れとりました。
     その後ウサギは学校開校以来初の子どもをもうけ、4匹の新しい仲間が
    加わった飼育小屋の周辺は、まさに昭和の街頭テレビに群がる群衆の如き
    盛況でした。

    452: 本当にあった怖い名無し 2007/03/05(月) 13:36:23 ID:BcoXaL0u0
     その数日後、突然インコが謎の死を遂げました。
     本当の原因を先生方が教えてくれなかったため、自分からは
    その発見の状態が不審であったということ以外は確信を持って
    伝えられません。彼らの発見された状態なのですが、飼育小屋の中央に
    高めの枯れ木がインコ用に植わっておりまして、その丸裸の木に
    一匹ずつ首にナイロンの紐を巻きつけゆらゆらゆれている状態だったのです。
    丁度人間が首吊りした状態と酷似しておりました。
     ここから明らかに人為的なものであると考えられるのですが、
    それにしてもおかしいのが犯人の飼育小屋に入った形跡がまったく
    ないことでした。かかっていた2つの南京錠や網にはどこにも
    傷つけられた場所はありませんでしたし、周辺の地面は硬く、さらに
    この飼育小屋はウサギ逃走対策のために底のコンクリートは
    地面に深く埋まっていたので穴を掘って入れたはずは無く、
    実際掘った跡等まったく確認できませんでした(ここまで確認したところで、
    我々は教員らに教室へ強制送還されてしまいました)。
    鍵は職員室で常に教頭先生が保管されているため、当然外部の者が
    手に入れることは出来ません。

    454: 本当にあった怖い名無し 2007/03/05(月) 13:39:06 ID:BcoXaL0u0
     その時横で「それを誰がやったか朝見ていた」と発言した子がいたのです。
    皆は彼にいっせいに注目し、教員らはその子を職員室へ連れてきました。
    我々が自習の間、恐らく話を聞いていたのだと思います。
    ただ、彼は同じ学年だったのですがあまり教員生徒から信頼厚いという
    訳でなかったため、「あいつんち貧乏やから(理由になっていないw)
    あれは注目浴びたかっただけだ」と周囲は興奮して話しておりました。
    自分は貧乏だからというより、単に彼が少し知恵遅れの気があると
    感じていたため、この意見は自分の中で無効としておりました。
    そして、担任の教員は教室に入るなり、今回の事件は
    「偶然飛んでいるインコが首に紐を引っ掛けてしまったため死んでしまった」
    というワクテカしていた我々にハァ?と思わせる超理論を平気でぶちまけ、
    事件は強制的に収束へと向かうかに思えました。

    455: 本当にあった怖い名無し 2007/03/05(月) 13:41:41 ID:BcoXaL0u0
     ところが事件はウサギチルドレンの死でまた盛り上がります。
     今度は1匹が紐で吊り上げられ、残りは部屋の穴の隅っこに
    プレスしたかのように押し込められている状態でまたも一同騒然としました。
    親ウサギはそれを横目に人参やレタスを食み、一同は一種異様な空気に
    飲まれました。現場状況は以前のインコ事件と同じでありました。
     その中、後ろであの彼が大声をあげて言ったのです。「ボクは
    今回もみました。本当に見ました。」と集まった生徒、教職員に向かって
    言ったのです。
     その時です。自分があくまでそう感じただけなのかもしれないのですが、
    集まった生徒、教員全員が文字通り彼を「無視」したのです。普通
    幾人かは「またこいつ言ってやがる」と冷たい目を向けるはず(実際今まで
    それがデフォだった)であるのに、そこにいる人間全てが彼の存在自体を
    「無視」したのです。熱気の中に冷えた空気が混ざり、自分には
    異様な光景と映りました。

    456: 本当にあった怖い名無し 2007/03/05(月) 13:44:11 ID:BcoXaL0u0
     その時初めて自分はその彼という存在に興味を持ち、
    「君、本当に見たの?」
    と尋ねたのです。すると彼はしっかりこちらを向き、
    「うん、僕は見た。真っ黒なんだよ。あの人は、真っ黒だった。」
    と返してきました。
     自分がその人は黒い服を着ていたのかと聞くとどちらか良くわからないと
    返してきました。普通は黒い服を着ていたのだと解釈するのが多いのに、
    そうしないのは子ども故かなと感じました。それでどうしてその時
    先生に言わなかったのと聞くと、彼がこう言ったんです。
     「だってね、それは駄目だよ。だってそうしたらボクいるのがばれちゃう
    でしょ?イサルキにつかまったら駄目でしょ?」
     でしょ?と確認されてもそのような話を聞いたことがないので、
    自分は返答できませんでした。
     その後なんですが、結論から言うと彼をその後みたことはありません。

    457: 本当にあった怖い名無し 2007/03/05(月) 13:48:47 ID:BcoXaL0u0
     自分の学校で転校する子は必ず全校集会でお別れ会的なスピーチを
    繰り広げるのですが、その中に彼はいませんでした。
    よって、転校していないはずなのですが、その後中学へと進学する際、
    私学へ行った子らの中にも彼の姿は存在していませんでしたし、
    公立へ進んだ我々の中にもいませんでした。アルバムの中にも当然
    存在していませんでした。
     自分が疑問に思うのは以下の点です。
    まず、どうやって犯人は飼育小屋で犯行に及んだのか。次に、
    彼がそっとみたものは何か、「イサルキ」とやらであるとなぜ彼は
    断定したのか。そして「イサルキ」とはいったい何か、なぜ2度目のあの時
    生徒、教員までが彼を無視したのか、「イサルキ」に見つかったら
    どう駄目なのか。
     まぁ、真相全ては藪の中です。ですがいわゆる「ヒサルキ」の
    まとめサイトと関連サイトを目にしたことで、急にこの出来事について、
    そしてあの時の群集の中に混じる薄ら寒い空気を思い出したので、
    昼日中ではありますが、書かせて頂きました。
     長文につき後付けではありますが謝罪させてください。
    イイネ! 返信